日本経済の復活のための処方箋

このエントリーを含むはてなブックマーク Yahoo!ブックマークに登録 この記事をクリップ! @niftyクリップに追加 イザ!ブックマーク newsing it! BuzzurlにブックマークBuzzurlにブックマーク twitterでつぶやく

池尾和人氏マル激トーク・オン・ディマンド
(2010年02月06日)
日本経済の復活のための処方箋
ゲスト:池尾和人氏(慶應義塾大学経済学部教授)

 リーマンショックに端を発する世界同時不況から約1年5ヶ月。日本経済はGDP実質成長率が3四半期連続でプラスとなるなど回復基調の兆しが見られるものの、景気回復の実感は薄く、雇用情勢も失業率5.1%、有効求人倍率0.46倍と依然として厳しい状況が続いている。さらには円高や消費低迷でデフレの進行が止まらず、二番底を懸念する声も根強い。折しも5日、米国株式市場の急落を受けて日経平均株価が1万円を割りそうになるなど、景気動向については予断を許さない状況だ。日本経済はいつになったらこの不況を打破でできるのか。

 経済学者で金融論が専門の池尾和人慶應義塾大学教授は、不況には一時的な景気悪化でその経済が本来持っている実力よりも下ぶれしている場合と、そうではなく実力そのものが低下している場合があり、現在の日本の経済不況は明らかに後者だと言い切る。

 2002年以降の日本経済は米国の過剰消費に輸出産業が引っ張られ、実力以上に好調な景気を維持してきたが、リーマンショックを契機に一気に失速した。その後、緩やかに回復してきてはいるが、現在の停滞状況は日本経済の本来の実力を反映しているに過ぎないというのが池尾氏の見立てだ。今後の見通しについても、「質素で退屈で憂鬱な」低成長時代が続くと池尾氏は言う。

 かつてジャパン・アズ・ナンバーワンとまで言われた日本経済は、なぜそこまで力を失ってしまったのか。池尾氏はその問いに対して、一言で言えば日本の経済の仕組みが硬直化し、内外の環境の変化に対応できていないからだと見る。 

 90年前後に起こった冷戦の終結は、ロシアや東欧の自由主義経済への参入や中国の開放政策の成功、インドやその他の新興国の台頭をもたらし、市場経済の規模が一気に拡大した。その結果、グローバル資本主義が成立し、そこに参加する人数もそれまでの10億人から40億人へと一挙に膨れ上がった。当然、グローバル市場における日本経済のウェイトは相対的に低下することになる。

 また、世界の工場として躍進を遂げた中国をはじめ、韓国や台湾などの近隣諸国が産業化に成功し、外でつくった製品を輸入した方が安いという経済合理性から、日本の国内向け製造業も大打撃を受ける。

 こうしたドラスティックな環境変化に日本は対応できず、産業構造の転換を図ることをしてこなかったと池尾氏は説明する。加えて、追いつき追い越せというキャッチアップ型の成長時代が終わったにもかかわらず、先進国型の経済成長に不可欠な、独自の技術開発やイノベーションを生み出すための教育や社会の仕組みづくりにも手を付けてこなかった。

 内外の激的な変化に対して何ら手を打たずにいれば、日本経済が弱体化するのも当然だ。そればかりか、日本経済の実力自体が落ちていることを直視せず、不況の原因を一時的な景気悪化と見て、財政出動というカンフル剤の投入を繰り返してきたのがこの20年間だったと池尾氏は言う。すでに長期債務残高は国と地方を併せて816兆円、対GDP比で160%以上にまで膨れ上がり、これ以上の財政出動の余力はない。しかも、そのツケは将来世代に回されるという世代間不公平が生じている。

 今や重篤な病いにかかってしまったかのような日本経済だが、果たして打開策はあるのか。池尾氏は、日本経済が抱える最大の問題点は需要構造と供給構造のミスマッチにあると指摘する。しかし需給ギャップというと、その原因は需要側にあると短絡的に考え、慢性的な需要不足に対して慢性的な財政出動を行ってきたのが、これまでの経済政策だった。現在の需給ギャップはむしろ供給サイドに問題があるというのが池尾氏の見方だ。つまり、売れるモノやサービスを提供できるように、人やリソースを配分するという供給構造の大転換が必要だという。そして、その際に生じる痛みを手当することに経済政策の主眼を置くべきだと池尾氏は主張する。

 医療、健康、介護、教育、環境といった分野における生産性を向上させることが日本の経済成長にとっての最優先課題になると説く池尾氏とともに、日本経済の現状と復活のための処方箋をを議論した。(本日のマル激本編は経済ジャーナリストの町田徹と宮台真司の司会で、ニュースコメンタリーは神保哲生と宮台真司の司会でお送りします。)

今週のニュース・コメンタリー
•検察の民主統制は法務大臣の責務
•郷原信郎氏インタビュー 郷原信郎氏インタビュー 
•奥平康弘氏インタビュー 奥平康弘氏インタビュー
•最初から無理筋だった「悪質性」の立証
•世論形成にネットが果たした役割は

関連番組
マル激トーク・オン・ディマンド 第357回(2008年02月02日)
サブプライム問題が露にしたグローバル経済の実相
ゲスト:水野和夫氏(三菱UFJ証券参与・チーフエコノミスト)

マル激トーク・オン・ディマンド 第354回(2008年01月12日)
2008年日本経済の課題
ゲスト:熊野英生氏(第一生命経済研究所主席エコノミスト)

マル激トーク・オン・ディマンド 第403回(2008年12月20日)
見えたり、金融資本主義の正体
ゲスト:小幡績氏(慶應義塾大学大学院准教授)

<ゲスト プロフィール>
池尾 和人(いけお かずひと)慶應義塾大学経済学部教授
1953年京都府生まれ。75年京都大学経済学部卒業。80年一橋大学大学院経済学研究科博士課程単位取得退学。岡山大学助教授、京都大学助教授などを経て、95年より現職。経済学博士。著書に『開発主義の暴走と保身』、共著に『なぜ世界は不況に陥ったのか』など。『現代の金融入門』(改訂版)を2月10日に出版予定。

February 6, 2010



トラックバック

このエントリーのトラックバックURL:
http://www.jimbo.tv/mt4/mt-tb.cgi/648


rss 人気ブログランキングへ
神保哲生のTwitterへ
ビデオニュース・ドットコム
マル激!メールマガジン
民主党が約束する99の政策で日本はどう変わるか?

RECENT ENTRIES

 07/16 パネルディスカッション「日本のジャーナリズムはネットで育つか?」に参加します

 07/11 TBSラジオに出演します

 07/10 ニコニコ生放送に出演します

 07/10 選挙特番 この選挙で何が問われているのか

 07/03 メキシコ湾原油流出事故で見えてきた石油時代の終焉

 06/26 まちがいだらけのマニフェスト選挙

 06/20 EUはユーロの挫折を乗り越えられるか

 06/13 脱・脱官僚のすすめ

 06/07 鳩山政権は何に躓いたのか-新政権の課題

 05/29 在沖米海兵隊の抑止力とは何なのか

 05/24 ニコニコ動画「徹底討論!事業仕分けを斬る!」に出演します

 05/22 なぜ日本経済の一人負けが続くのか

 05/15 「新しい公共」で国のカタチはどう変わるのか

 05/09 日本経済の現状とベーシック・インカムという考え方

 05/03 上杉隆さんとの東京FMの対談番組のビデオ

 05/01 5金スペシャル 映画特集
豊かな国日本がかくも不幸せなのはなぜか

 04/28 「NCNニコニコニュース~徹底検証!事業仕分け第2弾 ~第4夜~」に出演します

 04/24 交渉の全てを知る守屋元次官が語る
普天間移設問題の深淵

 04/24 新聞労連主催の記者クラブシンポジウムで基調講演をします

 04/23 「NCNニコニコニュース~徹底検証!事業仕分け第2弾 ~第1夜~」に出演します

LINKS

About this site

jimbo.tv はビデオジャーナリスト神保哲生が運営する神保個人のオフィシャルサイトです。
引用、転載などに関する情報は以下を参照してください。
SITE RULES
また、本ブログにお寄せいただいたコメントは、神保が執筆する著作やコラムなどに紹介や引用させていただく場合があります。あらかじめご了承下さい。

rss
Powered by MovableType
ビジネスブログ