シリーズ・民主党政権の課題3
温室効果ガスの25%削減は十分可能だ
マル激トーク・オン・ディマンド
第442回(2009年09月26日)
シリーズ・民主党政権の課題3
温室効果ガスの25%削減は十分可能だ
ゲスト:飯田哲也氏(環境エネルギー政策研究所所長)
「温室効果ガスを2020年までに1990年比で25%削減する」。
鳩山首相が国連気候変動サミットで表明した国際公約は、世界各国から称賛された。国際舞台で日本の政治家の発言がこれほど高い評価を受けるのは、一体いつ以来のことだろうか。
長年地球温暖化問題に取り組んできたNPO環境エネルギー政策研究所の飯田哲也所長は、環境分野に限らず、日本が国際政治を前に動かす原動力となったのはおそらく初めてのことであり、日本国民にとっても有意義な出来事だと、これを高く評価する。
しかし、こうした国際舞台での歓迎ムードとは裏腹に、国内では「現実的でない」「不可能だ」「負担が重過ぎる」と、25%削減目標に対する否定的な発言ばかりが報道されている。なかでも批判の論拠となっているのが、90年比25%削減が実行された場合、「国民負担が一世帯当たり年36万円増加する」という、「経産省試算」なるデータだ。
しかし、飯田氏はこの数字には悪意に満ちた巧妙なトリックが隠されていると言う。ここで言う「36万円の負担増」とは、この先日本が地球温暖化対策を何も行わなかった場合と25%削減した場合を比べたとき、2020年の時点で家計負担に36万円の差額が出るという話であり、何も各家庭が実際に36万円を負担しなければならないという話ではない。実は、90年比25%減を実現した場合でも、現在(2005年時点)より家計所得は76万円増えるのだ。それを、あたかも今より家計負担が36万円も増えるかのようにメディアを使って印象操作をするのは、温暖化対策をしたくない勢力によるたちの悪い脅迫だと飯田氏は批判する。
このようなネガティブキャンペーンが横行する中、飯田氏は、25%削減は決して無理な数字でもなければ、過度な負担を国民に強いるようなものではないと説く。むしろ、既に先進国が約束している最低基準でもある25%の削減が、国民にとって重い負担にならないようにするためには、今から様々な対策を行っておく方が賢明ではないかと言うのだ。
では、25%削減をいかに実現するか。
そもそも日本のCO2排出量を増加させた最大の原因は石炭火力発電の増加にあると、飯田氏は指摘する。しかも、日本は2023年まで石炭発電所を増やす計画だという。飯田氏は、まずはこれを凍結した上で、短期的には石油や石炭よりCO2の排出が少ない天然ガスにエネルギー源をシフトさせ、中長期的に太陽光や風力などの再生可能エネルギーに転換していくことが、25%削減を実現するための必須条件になるという。
そして、それを可能にするツールが、環境税(温暖化対策税)、排出量取引、固定価格買取制度の3点セットだ。しかし、民主党は先の衆院選のマニフェストでこの3つの実現を公約しているのだ。
事業者のCO2排出量に応じて課税をする環境税は、削減努力に経済的メリットが生じるため、既に温暖化対策としての有効性が欧州で証明されている。
新たな金融商品を生むだけと批判されることの多い排出量取引は、最初にキャップ(総量規制)をかけて、総量を抑えることに主眼がある。現在日本が試験運用しているような総量規制を設けないキャップレス・トレードではCO2は減らないことは当然のことと飯田氏は言う。
そして、25%削減の決定打となることが期待される再生可能エネルギーについては、電力会社に対して全ての再生可能エネルギーを固定価格で買い取ることを義務づける「フィード・イン・タリフ」と呼ばれる制度を実現できるかどうかが、成否を握っていると言っても過言ではない。これは事業者や家庭が風力や太陽光などの再生可能エネルギー発電を独自に行ったとき、その全量を一定の価格で買い取ることを電力会社に義務づける制度で、この価格設定を8年程度で採算があう水準に合わせれば、発電事業に乗り出す事業者や個人が爆発的に増えることが期待できる。ドイツやスペイン、中国など再生可能エネルギー先進国はすべて、この固定価格買取制度によって飛躍的に自然エネルギー市場を拡大させているが、日本では電力会社と経産省の抵抗が強く、未だに固定価格買取制度は実現していない。
実はこの11月から、政権交代直前に経産省が滑り込みで導入した擬似固定価格買取制度が始まるが、飯田氏はこれもまた「民主党政権が本物のフィード・イン・タリフを導入するのを阻止するために、経産省が投げたくせ玉」に過ぎないと、これを一蹴する。実はこの制度は、太陽光以外の再生可能エネルギーは一切除外した上に、個人のみを対象にした制度となっていて、一旦この制度が導入されてしまうと、対象を他のエネルギーに広げたり、事業者を買い取り対象に含めることが難しくなるように、意図的に設計されていると言うのだ。民主党政権は、まず本物のフィード・イン・タリフ導入の邪魔になるこの制度をストップすべきだと、飯田氏は言う。
いずれにしても、25%削減を実現するには、この3本柱のうちの一つでも欠けると、実現は難しいだろうと飯田氏は言う。逆に言えば、ドイツなどの成功例を見ても、この3点セットをしっかりと導入することができれば、国民生活に大きな負担を与えることなく、25%削減は十分に可能になると、飯田氏は言い切る。
25%削減の処方箋と、その実現の前に立ちはだかる抵抗勢力をいかに打ち破るかを、飯田氏と考えた。
今週のニュース・コメンタリー
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<ゲスト プロフィール>
飯田 哲也(いいだ てつなり)環境エネルギー政策研究所所長
1959年山口県生まれ。83年京都大学工学部原子核工学科卒業。同年神戸製鋼入社。電力中央研究所勤務を経て、96年東京大学大学院先端科学技術センター博士課程単位取得満期退学。00年NPO法人環境エネルギー政策研究所を設立し、現職。92~06年日本総合研究所主任研究員を兼務。90~92年スウェーデンルンド大学環境エネルギーシステム研究所客員研究員。著書に『北欧のエネルギーデモクラシー』、編著に『自然エネルギー市場』、共著に『日本版グリーン革命で雇用・経済を立て直す』など。
September 26, 2009
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October 29, 2009
コメント
結局、民主に都合の良い解釈しか書いていない!
大体今の状態で所得が増えるわけが無いし、
技術的にこれ以上の削減は他の国に比べても
日本は進みすぎているので無理!
結局、中国などからCO2の排出権を買うことになり、
その為に各家庭が負担する金額が36万増になると
言うことに触れてもいない!
民主に都合の良い意見だけ書くな!
September 27, 2009
上の人は単に中身が理解できてないだけのようなので、まともに相手にする必要もないとは思いますが、それにしても「書くな」はひどいですね。
神保さんが個人のブログに何を書いても神保さんの勝手です。異なる意見があるなら、自分もブログなり何なりに書けばいいだけです。
言葉狩りは絶対にやめてください。
September 28, 2009
火力発電が石炭の使用にシフトしてるのは将来の資源枯渇を睨んでのことでは?
石油も天然ガスも数十年後には枯渇しますよね。
石炭は来世紀まで持つようですが。
そのあたりの絡みはどうなってるんでしょうか?
September 28, 2009
ダイアモンドオンラインの記事を読みました。
記者クラブや、民主党のオープン化については、私も今後もウォッチしていきたいと思います。
リヴァイアサンなど、今の世の中に不要です。
今後も、貴重な取材を期待しています。
September 28, 2009
25%削減は十分に可能でしょう。問題なのは「最初から無理だ!」と言って国民が思考停止になってしまうことです。個人個人が努力を怠らないことが大切。そのようなメッセージが鳩山さんの演説に込められているのだと思います。
September 28, 2009
マル激に出演されたことがある池田信夫さんが、飯田哲也氏のことをブログのコメントでぼろくそに言っています。
http://blog.goo.ne.jp/ikedanobuo/e/95b9471cdbc2cfa7586819692f132421
September 28, 2009
全く同様の内容の指摘が確か朝日新聞だったか、出ておりました。日本は何も率先して25%削減すると言ってる訳ではなく、世界が歩調を合わせてそこに進もうという目標値を「最初に」示したのです。だから評価されているのです。世界のメディアのサイトなどを見ていると、おおむねプラス評価です。これまで官僚の作った作文を読むだけだった日本の指導者が、自分の言葉で語ったので好感を得た。嫌な顔をしているのは、石油を湯水のように使う事で権益を得て来た米国の共和党系勢力だけでしょう。
メディアは殆ど伝えていませんが、この25%削減と似た話に1970年頃、日本が定めた世界一厳しい自動車排ガス規制値があります。これも同様に当時の国内産業は一斉に反発しましたが、結果として日本のエンジン技術は世界最高峰になり、発展の礎となった。今回もこのように高い目標を政府が掲げる事で、様々なイノベーションが加速する可能性も大いに期待出来ます。
これに対して日本の、特に地上波の主張や解釈は毎度の事ながら無知蒙昧で幼稚そのものです。出て来る専門家というのも、そうしたテレビ局の意向に添って「理論づけ」モドキを行う御用学者ばかりです。デジタル化を良い機会に一旦、今の民放地上波などクリアした方がよろしい。
なお、個人的には池田信夫氏の主張一般について、氏の専門分野については鋭い切り口も見られますが、それ以外についてはトンチンカンなものが多く見られると受取ってます。過去の例では「PCBは毒ではない」とか「基本的人権なんて何の根拠もない」とかどう見ても物事を一方向からしか考えていない解釈も珍しくない。時代劇で悪代官をとっちめる正義の味方のような口調ではありますが、議論の本質には外れたものも少なくない事を念頭に置いて読み取るべきかと思います。
September 29, 2009
ぱぴぃさんのリンク先、読みました。
池田信夫さんの説の方が、私にはマトモに思えるのだが。
鳩山総理の勝手なスタンドプレーは、大迷惑。
景気対策を何もやらない、やれない内閣。
優先順位を間違えて、日本は大不況に突入か。
September 29, 2009
バイオ燃料が注目されたのってさぁ、二酸化炭素を吸収させることで作った燃料である・・・ってことでしょ?排出温暖化ガスの前借り分を放出するんだからプラマイゼロってことだよねぇ。
「排出を減らす」ってことは「製造を減らす」ってことになるんだろな。でも、それは国家成長を妨げる。ユーアイおじさんの提案どうりにするんだったら、「排出を減らす」と同時に「吸収を増やす」必要があると思うね。排出企業から金とって、吸収している森林所有者に金払う って制度があってもいいんでないかな。山林ばかりの地方に金入るよーな制度必要だと思う。日本って国土の7割は森林なんだしさぁ。。。
あそれと、JALの経営危機が話題だけど、飛行機1機が離陸するだけで、東京都民全員が2ヶ月呼吸するための酸素を消費するってから、すごいよねぇ。都民数×2ヶ月 の酸素消費ってのは、そのまま二酸化炭素排出量なわけで、旅客機の離陸は規制の必要があるんじゃないかな?北京オリンピックのとき、搭乗率20%程度の旅客機が飛んでいたらしいが・・・「搭乗率80%以下の場合、飛行を認めない。」ってくらいの基準を作るべきだよねぇ。。。
旅客機の全面飛行停止 とかすれば25%以上は、簡単に削減できる 事実を誰も語らないのは、資本主義経済国の国策なんだろな。
October 2, 2009
山口県の上関町で、原発のための埋め立て工事に着手しようとする中国電力と住民との対立がもう数週間にわたり続いています。しかし大手メディアでは放送されません。民主党の原発政策も自民のものとあまりかわらないのでしょうか?
October 2, 2009
飯田さんがマネーの信用創造を例に出されてましたが
なるほど同じ構造の"ゲーム"が始まると考えれば
"温暖化"はもうどうでもいいと思います。
温室効果ガスの排出量は
どうやって計測しているんですか?教えて下さい。
October 11, 2009
中米がCO2削減しないから、日本もしません(笑
なんて諸外国から失笑浴びるだけでしょ。
25%削減可能って言ってるけど、現実的かな?
根性論でCO2が減るなら、何ぼでも気合いれるよ。
炭火力発電に変わるエネルギー施設をどれだけ作って、どれだけCO2が削減できる?
どれだけの家庭かソーラーパネルを導入(自腹で)し
変換したらCO2がどれだけ減る試算なのか
全然見えない。
October 19, 2009
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