新型インフルエンザとのつきあい方

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第390回(2008年09月20日)
新型インフルエンザとのつきあい方


プレビュー

 WHOは、新型インフルエンザは発生から約1週間で世界に広がる大流行(パンデミック)を引き起こし、最悪の場合1億5000万人が死亡すると試算し、世界各国に対策を呼びかけている。感染症としては史上類を見ない規模で発生するこのパンデミックに対応するため、日本の厚労省も行動計画を作成し、対策のガイドラインを発表するなど、ようやく重い腰を上げ始めている。しかし、パンデミックがひとたび起きれば、医療機関へ殺到する感染者や感染を免れようとする住民によるパニックが起こり、社会的な混乱を引き起こす可能性が危惧されている。そうした事態に対応するためには、医療体制の確保や感染者の隔離、住民の行動制限や交通機関の運休、学校の休校や通勤の自粛など、複数の省庁や地方自治体、企業などの連携が不可欠となるが、依然としてその体制は十分には整っていないと指摘する専門家は多い。

 それにしても、人類はこれまでもさまざまな感染症に襲われてきた。なぜ、新型インフルエンザだけが、これほど恐れられているのだろうか?感染症対策に詳しい長崎大学教授の山本太郎氏は、現在は、従来のインフルエンザウイルスに替わり、新しいウイルスが登場する可能性が高い時期に入っており、人類は新しいウイルスに対して免疫がないことから、パンデミックはいつ起きてもおかしくない状態にあると語る。それが、現在恐れられているパンデミックが、スケールにおいても重篤さにおいても、従来のインフルエンザの流行とは桁違いになると予想される所以だ。

 これまで発生した新型のインフルエンザは、すべて鳥を宿主とする鳥インフルエンザが変異し、人に感染したものがその起源だった。現在、WHOが厳重に監視をしている鳥インフルエンザH5N1型は、97年に鳥を大量死させたことから注目されたものだが、従来から存在している鳥インフルエンザウイルスは宿主の鳥に重篤な症状を引き起こさなかったが、このH5N1型は宿主を死に至らしめるほど毒性が強い。また、H5N1型の鳥から人への感染は既に始まっている。WHOの発表では、2003年10月から2008年9月までに、世界15カ国387人がH5N1型によるインフルエンザを発症し、そのうち245人が死亡している。その中には極少数ではあるが、人から人への感染も報告されているのだ。

 山本氏は、人類が鳥インフルエンザを根絶することは不可能と語る。宿主である渡り鳥が国境を越えて、ウイルスを伝播する可能性も高い。また、どんなにH5N1型を監視しても、人への感染を引き起こす別のウイルスが突然登場する可能性もある。そのため、新型インフルエンザを完全に封じ込めることは不可能と考え、むしろ、発生後にどうパンデミックを遅らせるかを主眼に対策を練るべきと提言する。

 人類は、記録に残っているだけでも、17世紀後半からたびたび新型インフルエンザのパンデミックに襲われてきた。1918年のスペインかぜや1968年の香港かぜに見られるように、インフルエンザが世界中で流行を起こすと、人類は免疫を獲得し、ウイルスも次第に毒性を弱めていく。予想されるパンデミックも、1年ほどで収束する可能性が高い。そのため、新型インフルエンザが発生した場合は、まず徹底した封じ込めを行い、流行を遅延させることで、時間稼ぎをすることが重要だと山本氏は語る。そのためには、発生地となる可能性が高いとみなされているアジアの一員である日本への期待は大きい。日本政府は新型インフルエンザ発生の際には、率先して発生国に協力を行い、国際的な貢献をする必要がある。それが、自国民を守ることにもつながると、山本氏は説く。

 新型インフルエンザとはどのようなもので、われわれは何をどれほど恐れる必要があるのか。社会的な影響、パンデミック阻止に日本が果たす役割まで、新型インフルエンザと我々はどうつきあうべきかについて、幅広い議論を行った。

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<ゲスト プロフィール>
山本 太郎(やまもと たろう)長崎大学熱帯医学研究所教授
1964年広島県生まれ。90年長崎大学医学部卒業。長崎大学熱帯医学研究所助手、京都大学大学院医科研究科助教授、長崎大学熱帯医学研究所助教授を経て、2004年より外務省国際協力局に勤務。07年より現職。99~00年JICAジンバブエ感染症対策プロジェクト・チーフアドバイザー、03~04年ハイチ・カポジ肉腫・日和見感染症研究所上級研究員。著書に』、『新型インフルエンザ 世界がふるえる日』、『ハイチいのちとの闘い』など。

September 20, 2008



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