死ぬか殺すかまで若者を追いつめる労働現場の現実とは

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第378回(2008年06月28日)
死ぬか殺すかまで若者を追いつめる労働現場の現実とは

プレビュー


 秋葉原連続殺人事件は、結果的に派遣社員の過酷な勤務状況に社会が注目するきっかけとなっているようだ。既に舛添要一厚生労働大臣は、「日雇い派遣の原則禁止」の方針を打ち出すなど、事件の衝撃性から政治もいつになく敏感に反応しているが、派遣社員やフリーターが抱える問題を取材し、彼らの待遇を改善するための運動に参加してきた作家の雨宮処凛氏は、派遣労働者の待遇が改善されることは歓迎する一方で、自分たちが長年訴えても通らなかった要求が、この事件のおかげで一気に通ってしまったことを複雑な感情で受け止めていると言う。

 今回の事件が起きる前から、派遣社員やフリーターなど非正規雇用で働く人々には、人とすら扱われないような、追いつめられた状況があったと、雨宮氏は言う。氏の元には、「通り魔になりたい」や「みんな殺してやる」というような物騒なメールが以前から寄せられおり、事件の発生を聞いた時、「ついにやったか」との感想を持ったと語る。

 派遣労働者の中でも、加藤容疑者のように地方の製造業で寮生活を送る人は、一度派遣として働きはじめたら、働き続けるか、ホームレスになるかのギリギリの状況に追い込まれやすいと雨宮氏は指摘する。

 実際、派遣労働者は時給制のため、特に賃金の低い地方では、長時間の残業をしてやっと生活ができるだけの報酬を得ることができるのが実情だ。この少ない収入の中から寮費や光熱費をひかれ、多くの場合、ギリギリ生活ができる程度の年収100万円台しか手元には残らない。また、派遣先の都合で突然解雇されることは当たり前で、1年に数カ所の職場を転々とすることもよくある。

 さらに過酷な条件を強いられているが、「日雇い派遣」で働く人たちだ。毎夜メールで派遣先を提示され、翌朝指定の場所に集まる。1日ごとに次々と職場を変わる上、翌日仕事にありつけるかがどうかがわからないため、翌日の予定すら立てられない。ケガをしたり、病気をしたら、日々の収入が途絶え、簡単にホームレス化してしまう例を雨宮氏はたくさん見てきたと語る。

 若者たちがこのような絶望的な雇用環境に追い込まれる背景には、派遣法の過度な規制緩和がある。1986年に人材派遣法が施行された当初は、非正規雇用の対象となる業種は非常に限られていた。ところが、99年の派遣法改正で、派遣できる業種が原則無制限になり、04年に製造業も解禁となると、多くの企業がコストダウンのために正社員を派遣社員に置き換えるようになった。労働市場の規制緩和の一方で、政府はセーフティネットの整備を怠ったため、今や多くの企業で、派遣社員は名前ですら呼んでもらえないような非人間的な扱いを受けるケースが後を絶たないという。

 雨宮氏たちが運動を通じて求めていることは、「せめて人間らしい働き方を」や「生活できる賃金を」というささやかなものだが、これまでそれすらも理解されなかったと雨宮氏は不満をあらわにする。

 今週は派遣労働をはじめとした若者たちの過酷な雇用状況の実情と、そのような状況ががいかに彼らを追いつめているか、そしてそれを改善するためには何をしなければならないかを、過酷な非正規雇用の現場を数多く見てきた雨宮氏とともに議論した。

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<ゲスト プロフィール>
雨宮 処凛(あまみや かりん)作家
1975年北海道生まれ。93年高校卒業後、上京。96年右翼団体超国家主義『民族の意志』同盟に入会。愛国パンクバンド『維新赤誠塾』などを結成し活動。99年脱会。00年自伝『生き地獄天国』を出版。著書には『生きさせろ! 難民化する若者たち』、『雨宮処凛の闘争ダイアリー』など。

June 28, 2008



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