格差社会を生き抜くために知っておくべきこと

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第355回(2008年01月19日)
格差社会を生き抜くために知っておくべきこと

プレビュー


 07年は、流行語大賞に「ネットカフェ難民」が選ばれ、働いても貧困から抜け出せない「ワーキングプア」にも注目が集まるなど、日本の格差社会化がさらに進んだことを実感させられる1年だった。

 確かに格差や貧困の問題がメディアで取り上げられることが多くなっている。しかし、その取り上げ方は得てして表層的で、そうした社会の中で日々格差や不公正さを実感し、将来に不安を抱きながら生きる若者にとって、どのような防衛策をとることが可能であるかについての情報は少ない。

 そこで今回は、若者と労働、教育の現状に詳しい本田由紀氏をゲストに迎え、格差が固定されつつある社会で、若者が陥っている困難な状況の根底にある、「社会や学校の評価基準の変化」を明らかにした上で、そのような社会で生き抜くための戦略について考えた。

 本田氏は現代の日本の社会が、どのような学歴や能力をつけ、どのような職業を選択すべきかといった、「人生の戦略」が立て難い社会になっていると分析している。本田氏はこの状況を「ハイパーメリトクラシー(超業績主義)社会」と名づけ、欧米の「メリトクラシー(業績主義)社会」がさらに日本独自の進化をとげた状態と説明する。

 90年代までは、日本も学校卒業までの「業績」で就職先が決定し、最終学歴によって自分の社会での地位を確かめることができた。学歴主義自体はそれはそれで弊害もあったが、少なくとも努力をして学校での成績をあげることが、社会的地位の上昇につながるという、わかりやすい社会構造があったため、社会的な不公平感も抑えられていた。

 しかし、90年代後半頃から、日本では学校や企業が、目に見える“テストの結果”や“学歴”に加え、意欲やネットワーク力など定義があいまいで、個人の人格にまで関わるような能力が、評価の対象となりはじめたと本田氏は言う。95年の「EQ力」ブームや、96年の文科省が「生きる力」の育成を答申として出したころから、求人広告にも、「生きる力」「多様性」「能動性」「ネットワーク力」の文字が踊るようになり、その人の全人格が評価される社会が現出した。それが本田氏の言う「ハイパーメリトクラシー社会」だ。

 「ハイパーメリトクラシー社会」の問題点は、そこで重視される能力の多くは定義があいまいで、数値化するのが難しく、判断する側の判断基準にも個人差があり、不公平感が出やすい。その結果、評価される側が「なにをどう努力していいのかわからない」状況を招き、若者の無気力や諦め、社会に出ることへの不安を助長することだと言う。また、その能力の多くは、多分に生得的なもので、教育や努力を通じていかに身につけるかが解明されていないため、それが格差を固定する要因ともなってると本田氏は言う。

 今回は、アメリカのの貧困問題に関する著作「ルポ貧困大国アメリカ」(岩波新書)を上梓して間もない堤未果を司会に迎え、本田氏とともに、固定化が進む格差社会を生き抜くためには、現状をどのように捉え、どう行動すべきかを議論した。

<ゲスト プロフィール>
本田 由紀(ほんだ ゆき)東京大学大学院教育学研究科准教授
1964年徳島県生まれ。94年東京大学大学院教育学博士課程単位取得退学。94年より日本労働研究所研究員、01年東京大学社会科学研究所助教授を経て、07年より現職。03~06年、東京大学大学院情報学環助教授を併任。著書に「若者と仕事――『学校経由の就職』を超えて」、「多元化する『能力』と日本社会――ハイパー・メリトクラシー化のなかで」など。


堤 未果(つつみ みか)ジャーナリスト
1971年東京都生まれ。 98年ニューヨーク市立大学大学院国際関係論学科修士課程修了。国連、アムネスティーインターナショナル支局員を経て、米国野村證券に勤務中、9・11に遭遇し、ジャーナリストに転身。著書に『ルポ 貧困大国アメリカ』、『アメリカ弱者革命』など。

January 20, 2008



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コメント

投稿者 干潟 

専門化による防御は解決にならないと思います。
本田さんの専門分野が社会的価値がある現実は偶然性的要素もあると思うからです。

多様な人格を認める社会的基盤を再構築するには経済的な最低限の保障が必要で、新自由主義者達が描こうとしている社会が生き苦しく、御免こうむる事を明確にすべきだと思います。

ケインズVSシュンペーターの論争の決着をこの十数年起きた事をベースに計る事の方が解決に向かうと思います。

January 21, 2008

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