国民投票法案の中身を知っていますか

このエントリーを含むはてなブックマーク

marugeki_308_iguchi.jpgマル激トーク・オン・ディマンド
第308回(2007年02月23日)

国民投票法案の中身を知っていますか

ゲスト:井口秀作氏(大東文化大学法科大学院助教授)

プレビュー

 安部政権は憲法改正の手続き上不可欠となる国民投票の方法を定める、いわゆる「国民投票法案」を今国会で成立させる意向を明確に打ち出している。与党側はこの法案を、憲法に定められた手続きを規定するだけの「手続き法」と位置づけ、強行採決も辞さない構えを見せている。

 しかし、憲法学者で各国の国民投票制度に詳しい井口秀作氏は、法案にはいくつかの重大な問題点があり、これを単なる「手続法」と受け止めることには、慎重さが求められると指摘する。

 まず、国民投票の方法について、法案では「関連する事項ごとの投票」となっているが、これでは国民は複雑に意見が絡み合う問題でも二者択一の選択を迫られてしまう可能性が高いと言う。例えば、憲法9条を改正する場合に、自衛権のみを明文化する条文と、集団的自衛権の行使を認める条文が提示された場合、「関連する事項ごとの投票」では一括して賛否を問われることになる可能性が高いため、自衛権には賛成だが集団的自衛権には反対の人の意見は反映されないことになる。与党側は、条文ごとの投票では話が複雑になりすぎて国民がついてこれないと主張するが、だとすれば、そもそも国民投票を行う意味は何なのかという問題も出てきそうだ。

 また、現在の与党案では、改憲案が国会から発議された後、国民投票の前に国民に対する広報は国会内に設置された広報協議会が行うことになっているが、この協議会のメンバーは国会の議席配分に応じて構成される。国民投票では本来、賛成、反対の意見が平等に国民に提示される必要があるが、現行の与党案では広報段階で国会内の勢力が反映されてしまうため、国民投票が中立的な立場から行われなくなる危険性があると井口氏は指摘する。

 同時に、現行法案では各政党の改憲案に関する広報費用を政府が助成することになっているが、これではメディアが政府から多額の広告料を受け取る立場に置かれることになるため、中立的なメディア報道が担保されるかどうかについても懸念が残る。

 他にも、投票が有効になるための最低投票率が設定されていない点や、「国民投票法案」と呼んだり「手続法」と呼んでおきながら、実際は憲法審査会を設置することを定める国会法の改正をも含む「憲法改正のための法案パッケージ」的な色彩が濃い法改正である点についても、井口氏は注意を喚起する。そもそもこの法案を「国民投票法案」と呼ぶことに疑いを持つ必要があるというのが井口氏の主張だ。与党が今国会での成立の意志を明確にしているにもかかわらず、メディアが法案の問題点を積極的に指摘しようとしない点も気になる。

 5月3日の憲法記念日までの法案成立が取りざたされる中、憲法調査特別委員会の中山太郎委員長(自民党)と同委員会の委員を務める辻元清美議員(社民党)の主張に耳を傾けながら、「いわゆる国民投票法案」とその背後にある推進派の真意について井口氏とともに考えた。

<ゲスト プロフィール>
井口 秀作(いぐち しゅうさく)
大東文化大学法科大学院助教授
1964年新潟生まれ。一橋大学法学部卒業後、94年同大学大学院法学研究科博士課程単位修得満期退学。大阪産業大学講師、同大学助教授を経て、05年より現職。専攻は憲法学。共著に『いまなぜ憲法改正国民投票法なのか』など。

February 24, 2007



トラックバック

このエントリーのトラックバックURL:
http://www.jimbo.tv/mt4/mt-tb.cgi/366


憲法改正! from 徒然時事日和
自民党の中川昭一政調会長は1日のNHK番組で、憲法改正手続きを定める国民投票法案の与党修正案について「ここまで来たら(野党は)政争の具にしているので、や...

April 1, 2007

コメント

投稿者 vox_populi 

 別の番組の感想で恐縮ですが、「永田町コンフィデンシャル」は、番組の作り自体からやはり再考した方が良いと思います。特に、大変残念ながら、角谷浩一氏はインタビュアーとして適任とは言えないと言わざるをえません。政治家となる人々は概して知識水準が高く、これに対して角谷氏の想定する知識水準(角谷氏自身の知識水準とまではあえて言わないが)が低すぎるため、その結果、角谷氏は政治家から面白い発言を引き出すのに失敗しているように思われます(少なくとも、私が見た第1回と第4回ではどちらにも、失敗が見受けられます)。

 神保氏におかれては真剣な再考をなさるよう心から希望します。

March 3, 2007

投稿者 9B 

上記のかたとは真逆の感想を持ちました。

角谷氏のような付和雷同しない穏健派というのは案外少なく、欧米とは異なり、日本においては希少価値な存在です。
変わり者(神保氏や宮台氏)ではない真っ当な紳士が、videonewsに参加されているのは結構じゃありません?

vox_populi さんの
>政治家となる人々は概して知識水準が高く

にはビックリしました。ほとんどの政治家は傲慢で勉強不足、単なる拝金権力主義者でしょう。
(わたしは内部に関わっていましたが、政治家ほどオイシイ職業は無いのですから・・・「乞食と議員は3日やったらヤメラレナイ」という言葉があります。選挙に通りさえすれば、ご馳走にありつけるわけです。そんな中、襟を正せる政治家のほうが珍しい。
しかも2世・3世ならば、赤ん坊の時からなにひとつ、本当の知識水準などおかまいなしに安楽でいられます。安倍さんクラスでは、揺り籠の中しか知らずともいいのです)

その数少ない人間的或いは知的水準の高い政治家ゲストを、「永田町コンフィデンシャル」が人選しています。こうした人選はしないマスコミが多い中、人選ひとつ取るだけでも価値があります。

March 3, 2007

投稿者 vox_populi 

9Bさんへ


 ご批判を拝見しました。もう少しはっきり言うと、私が見た第1回(谷垣氏)でも第4回(岡田氏)でも、私は角谷氏の質問に対して政治家の側が「なぜこの人はこんな質問をするんだ?」といぶかしがる様子を見せていたのを見て、上のように言いました。政治家になめられるようなインタビュアーでは失格と言わざるをえません。


 例えば今回の第4回で言えば、角谷氏は岡田氏に対して、民主党はなぜこれほどまでに伸び悩んでいるのかという点をどうしてもっと徹底して問いたださなかったのでしょうか。40分の時間の半分以上をこの点に費やしてもよいと私などは思います。相手の政治家を質問で苦しめてこそのインタビュアーだと私は考えます。


 政治家の知識水準については単なる見解の相違でしょう。9Bさんがどのような内部をご覧になったかは存じませんし、興味もありません。

March 3, 2007

投稿者 9B 

vox_populi さんへ


貴殿の気持ちは理解できます。
岡田氏は、イラだった表情を随所に出していますね。
しかし私は、その点を貴殿とは逆の受け止め方をしました。

角谷氏は何度も「岡田さん成長されましたね」と発言していましたが、裏返せば、実に子どもっぽかったということです。すぐ相手の質問にイラつくのは子どもっぽさがまだ抜けていない証拠。

並のインタビュアーでは、岡田氏と話したらゲンナリしそうです。田原総一朗のようなイジワルはまた別で、岡田氏の堅さを揶揄することに終始します。その点、角谷氏は岡田氏からイラッとした表情や文句を投げつけられても、あくまで優しく岡田氏を見守っていたのですから、大したもの。


悪口を申しましたが、(猿蟹合戦のウスのような)正義漢の岡田氏が、果敢に現実と向き合う経験から人間味が益々充実し、実力が図抜けていることは間違いなく、私は未来の日本を背負ってほしいと切望しています。

確かに、vox_populi さんの言われるとおり、岡田氏を苦しめるほどのインタビューを見て見たい気はしますが、岡田氏のような怒りん坊さん相手には難しいのではないでしょうか。また、不特定多数が見る番組で民主党の問題点を指摘する程度の軽い人物なら、尊敬はされますまい。


PS
現実は、TV以上に面白くもあり、同時に情けなくなります。少なくともこの「オイシイ」政治家という世界で、清潔さと知力を保つ政治家の価値がどれほど貴重か痛感します。
正直、インタビューの良し悪しよりも、岡田氏という稀有に公正無私な政治家と、岡田氏を大切に扱う角谷氏に私は敬意を払いました。

March 5, 2007

投稿者 vox_populi 

9Bさんへ


 同意はしませんが(いやな質問をされて怒るような政治家なら、それこそ底が知れた人間とみなされても仕方がないでしょう・・・そして、岡田氏はその程度の人間ではないと、期待も込めて私は言いたいところです)、お考えは理解したつもりです。ご返事にお礼申し上げます。

March 6, 2007

コメントしてください

サイン・インを確認しました、 . さん。コメントしてください。 (サイン・アウト)

(いままで、ここでコメントしたとがないときは、コメントを表示する前にこのウェブログのオーナーの承認が必要になることがあります。承認されるまではコメントは表示されません。そのときはしばらく待ってください。)


情報を登録する?



rss 人気ブログランキングへ
神保哲生のTwitterへ
ビデオニュース・ドットコム
マル激!メールマガジン
沖縄の真実、ヤマトの欺瞞 米軍基地と日本外交の軛

RECENT ENTRIES

 02/04 東大話法に騙されるな

 01/29 だから消費税の増税はまちがっている

 01/21 われわれはどこから来て、どこへ向かうのか

 01/14 原発事故の裁判所の責任を問う

 01/07 2012年を生き抜くために

 01/07 5金スペシャル
日常から日常を見つめ直すために

 12/25 恒例年末トークライブ
ぼくたちが明るい兆しが見えてきたと考える理由

 12/17 やっぱり2011年マスメディアは死んでいた

 12/10 内部被曝を避けるために今こそ広島・長崎の教訓を活かそう

 12/03 暴力団を社会から完全に排除することの意味を考えてみた

 11/26 ドイツに脱原発ができて日本にはできない理由

 11/24 今週のDigのポッドキャスト

 11/21 メディアが権力に屈する時

 11/12 区長になって見えてきたこと

 11/05 TPPで食の安全は守れるのか

 10/29 今こそナショナリズムを議論の出発点に

 10/26 「分かち合い」のための税制改革のすすめ

 10/15 iPS細胞は何がそんなにすごいのか

 10/08 そしてアメリカは変わったのか

 10/01 5金スペシャル
自分探しを始めたアメリカはどこに向かうのか

LINKS

About this site

jimbo.tv はビデオジャーナリスト神保哲生が運営する神保個人のオフィシャルサイトです。
引用、転載などに関する情報は以下を参照してください。
SITE RULES
また、本ブログにお寄せいただいたコメントは、神保が執筆する著作やコラムなどに紹介や引用させていただく場合があります。あらかじめご了承下さい。

rss
Powered by MovableType
ビジネスブログ