40年間現場主義を貫いてきたジャーナリスト鎌田慧さんとのマル激
Tweet今週は若かれし頃の私にも宮台さんにも多大な影響を与えていたことが今回明らかになった、鎌田慧さんがゲストです。
鎌田さんは、数少ない「私が尊敬するジャーナリスト」の一人でもあります。
これまでそこそこ大物が登場しても、ある程度場馴れしていることもあって、私も宮台さんも緊張するようなことはありませんでしたが、今回ばかりは二人ともお互いが硬くなっているのがわかって、ちょっと変でした。幼児体験とまではいいませんが、若い頃に一度でも「すごい!」と思っちゃった人って、そのあと自分がいくつくなっても恐れ多いもんなんですね。
鎌田さんは今68歳ということですが、私も68歳になった時に今の鎌田さんくらいのペースで書き続けて(私の場合は撮り続けてもいたいので、更にハードルが高いかもしれませんが)いたいと、強く思いました。
話の内容も、私にとっては、実際に現場を歩いてきた鎌田さんならではの話が随所に登場し、とても参考になりました。
マル激トーク・オン・ディマンド
第281回[8月18収録]
シリーズ『小泉政治の総決算』その3
働かない日本 働けない日本
ゲスト 鎌田慧氏(ルポライター)
小泉政治の5年間を検証する「小泉政治の総決算」シリーズ第3弾は、長年にわたり日本の労働者の現状をつぶさに取材してきたルポライターの鎌田慧氏をゲストに迎え、小泉改革の負の遺産と言われる格差社会の現状について、鎌田氏の豊富な現場情報をもとに議論を進めた。
鉄鋼全盛の時代から労働問題を取材してきた鎌田氏は、今日の労働者の権利は1950年代並に悪化していると指摘し、その背景に労働者派遣法や労働基準法などの大幅な法改正があると言う。厚生労働省の統計によると、パートやアルバイト、派遣などの社員ではない不安定な形で雇われている人の数は04年に1500万人を超え、今や全雇用者の3分の1を占める。
かつて戦後日本の炭鉱や土木現場で行われていた、期間工や日雇い労働者を集めてきて賃金をピンはねする行為は違法行為とされ、それがヤクザ発祥の源になったとまで言われる。しかし、86年に労働者派遣法が制定されて以来、労働者を派遣して上前をはねる行為が正当なビジネスとして急速に拡大した。一見、雇用者にも被雇用者にもメリットがあるかのように喧伝されている労働者派遣ビジネスだが、その実は最少のリスクで都合良く使い捨ての労働力を得たいと考える企業のためにあり、多くの労働者が厳しい雇用条件のもとで経済的に不安定な生活を強いられていると、鎌田氏は警鐘を鳴らす。
鎌田氏はまた、企業がグローバル市場での熾烈な競争に晒される中、かつては企業が担っていた日本における相互扶助のシステムが崩壊しており、低賃金で不安定な仕事を転々とする中で将来の見通しがたたない労働者が、行き場を失っていると言う。特にそれが若い世代で増えていることも、問題をより深刻にしている。
そして、彼らの閉塞感や絶望感に巧みに訴えることで、本来は彼らを追いつめる政策を実行しておきながら、彼らからまんまと票や支持を取り付けることに成功していたのが小泉政権の本質だというのが、鎌田氏の見立てだ。
それにしても日本はいつから働きたい人が働けない国になってしまったのか。格差社会の長期的な影響はどこに現れるのか。小泉政権の交代で、状況が改善される可能性はあるのか。鎌田氏と共に考えた。
August 19, 2006
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コメント
見ていて気づいたことですが、格差社会の現状について問われるたびに、宮台氏がストレートな答えを避けているように見えました。確か私の誤解でなければ、宮台氏は、若者が自らの夢の実現のためにフリーター生活(つまり、下層階級的な生活)を選択することを肯定する趣旨のことをどこかで言っておられたのではなかったでしょうか。ところが今回の話では、そういう「選択」は実は仕組まれた「選択」であり、後で気づいても変更ができないというふうになっており、その傾向は今後さらに強まるという趣旨の話になっていたように思えます。
宮台氏が社会に対して発言する、その意味で「行動する」社会学者を目指すのであれば、そして格差社会の現状を問題だと思うのであれば、その問題に対する(例えば、労働をめぐる不公正をどう是正するべきかについての)処方箋を提示することをこそ目指すべきなのではないでしょうか。「おたく」に関する薀蓄で話をまぜっかえすのではなく。
とはいえ、メインストリームのメディアで取り上げない今回のような話題を取り上げているビデオニュースの取り組みに敬意を表することにかけては人後に落ちないつもりであることを、申し添えておきたく思います。
August 20, 2006
2点ほど、感想です。
1) 格差社会、ジニ係数など
ジニ係数の話がでるたびに思うのですが、
「日本の資産の4分の3を、4分の1の富裕層が持っている」といった表現は、仮に正確だとしても、実感がつかみにくいですね。ちょっと聞いただけでは、3とか4とかの数字の影響で、格差は3倍とか4倍程度であるように錯覚します。しかし計算すればすぐわかるように、全体で100人の人間が資産100を持っているととすれば、富裕層25人が75ということですから1人平均は 3、対して貧困層75人で25ですから、1人平均は0.333.. つまり、各層の平均で考えると、「9倍の格差」ということになります。
サバ読んで10倍の資産格差、これはもう、はっきりいって「階級差」といっていいようなもので、いつまでも「格差が広がりつつある」というあいまいな言葉で扱っているのは、問題の認識の共有を遅らせる結果になるのではないかと、思います。
世界的に見て日本の貧富の差がどの程度のものか、私自身は知りません。「もっとひどいところ」は多数あるだろうと思いますが、ひどいならひどいなりに、国民がその事実を知っていることは重要だと思います。こないだまで「一億総中流」(これ自体が幻想だったのだろうと思いますが)と自認してきた社会ですから、自己認識の転換はかなり急務ではないかと思うのです。認識が共有されなければ、連帯も発生し得ないので。
2) 派遣労動の環境など
私も昨年までいくつか派遣労動に出ていたので、現在の状況は「悪化」というより、「無法化」というほどひどいものであると感じます。
派遣労働が無権利状態であるのは確かで、それを可能にしたのが派遣法の改正であることも確かだと思いますが、より根本的には、派遣労働法自体が基礎としている労基法その他の労働者を護るための法制が、もはや完全骨抜き、死分化しているという背景があると思います。
派遣労働者に対して労基法が守られないのは、「派遣だから」というだけでなく、正社員でも大してかわらない状況があります。それは戦後一貫して、政官財、メディア、裏社会も連携して行ってきた労組潰しの成果でもあり、またそもそもが「労基法」など知らなくても十分人を雇って会社経営ができてしまうという、いい加減な経済・労働法制の結実でもあります。
私などがいうのもおこがましいのですが、鎌田氏はまさにこのあたりの戦後の労働史を見てこられた方だと思いますので、そのあたりから現在の派遣労動への必然的流れみたいなところを、もう少しお聞きしたかったと思います。
August 22, 2006
タク庵さん
いつも素晴らしいコメントを書かれているなあと存じます。これからも大いに勉強させて頂きます。
ところでタク庵さんのコメント1)の資産格差について参考データを見つけましたのでご紹介しておきます。http://www.nikkeibp.co.jp/sj/column/a/26/index.html
大前研一氏のコラムの第24回「格差社会・日本を数字で裏付ける」では、1999年と2004年の総務省の調査データを紹介しています。ここでは1999年と2004年の間に、高年齢層と低年齢層の資産格差、そして高収入層と低収入層の資産格差が広がったことがデータで示されています。
年齢層比較(年齢6区分)では最も若い群と最も高齢の群の差が99年の6.7倍→04年の7.3倍と拡大。
収入層比較(最低層、平均層、最高層の3区分)では3.05倍→3.35倍と拡大しとなっています。
そして個人金融資産の残高が過去最高の1508兆円に達する中、日本の格差社会は着々と進んでいると結論付けています。収入層区分は3区分なので、これをもっと多くの区分にすれば、そして2005年データを使えば差はもっと大きく表現できる筈です。二人以上の世帯のデータなので独居老人の資産も除かれているようです。
ここからはタク庵さんのコメントと関係しないので恐縮なのですが、今朝の毎日新聞に「安倍氏、改憲に意欲」と見出しがありました。安倍さんに好感を持っている人たち=改憲支持派、にされてしまっているのかと思うと、本当に怖い話ですね。
August 23, 2006
beat & NSXさん、コメントとデータのご紹介ありがとうございます。私は独断と偏見と、少ないデータを元にモノを言ってしまう傾向があります。どうぞご注意ください(^^;
今回のような話題では、信頼できる統計データとその解釈の共有いうものが本当に重要だと思うのですが、私がいつも胡散臭く感じているもうひとつの数字は、「完全失業率」というやつです。じつは最近知ったのですが、「完全失業率」の「完全」という意味が、単純に「完全に失業している」という意味ではないのですね(ーー;
完全失業率のミステリー
http://www.hyogo-kokyoso.com/infobox/messages/73.shtml
ここであげられているように、就職意思があり、現に求職活動中で、かつ労働力調査の「調査週」である月末1週間において全く仕事をしない等の条件を満たせば「完全」な失業者なのです(職安への登録は条件とされていないようです)。では、同じように就職意思があり、現に求職活動中だが、月末1週間において、1時間でも何らかの仕事をした人は? 「不完全失業者?」 いいえ、こういう人は、そもそも「失業者」でなく、「非労働力人口」になるのだと、総務省のHP自体が胸を張って言っております。
http://www.stat.go.jp/data/roudou/qa-1.htm
これによると、昨年平均の「完全失業者」は294万(これが完全失業率の根拠)、対して、就職意思があるが「完全失業者」の基準にはずれる「非労働力人口」は489万人(^^;
「完全」な方々と実質たいして変わらないと思われる仕事の無い人間が「完全」の倍近くいるのに、それらを「不完全」どころか「非労働力」として、算定の対象外とするというのは、それはアンマリじゃないすかぁぁ(--!
こういう誤解をまねく用語を、なんの説明もなしにそのまま流しつつ、「完全失業率が下がった」などと垂れ流しているマスコミもマスコミです。自分の言葉を持たぬ、政府の下請け広報部門としかいいようがない。新聞の全体に「政府広報」と入れた方が誤解がないのではないのかと思います。
とまらなくなるので、この辺で失礼。。。
August 24, 2006
訂正です。月末1週間において1時間でも仕事をした人は、「非労働力人口」ではなく、「就業者」に分類されるようです。
仕事を探しているがなかなか見つからず、食い詰めて、立ちんぼのティッシュ配りの日雇いで1日働けば、それでめでたく「就業者」(--; 年収1500万のフルタイム正社員様と平等に扱ってもらえます(--;
August 24, 2006
タク庵さん
ジニ係数は資産では無く、所得について言及されるケースが多いようですよ。マル激放送の中でも所得についてのジニ係数の紹介となっています。
私が紹介した情報は、資産に関するデータとなっております。
>1999年~2004年の収入層比較(最低層、平均層、
>最高層の3区分)では3.05倍→3.35倍と拡大し・・・
これは最低層に対する最高層の比(資産価格の比)が拡大したという意です。
August 25, 2006
beat & NSX さん
ご指摘ありがとうございます。たしかに、所得について言われることがおおいようですね。私の引用が不正確でした。
この機会に少し調べましたところ、もともとジニ係数は「分布状況の平準度」を見るための統計数値で、それを所得や資産の分布に適用すればどうなるかという話のようですね。
http://www.nihonkaigaku.org/ham/eacoex/100econ/120doms/122dist/1224inc/gini/gini.html
それと、ジニ係数は、その社会全体としての「格差度」をあらわしてはいても、「富裕層」と「貧困層」の割合とか、いくつの階層に分かれるかについては何も示していないのですね。したがって、「25%の富裕層が」云々というのは、正確には、「富裕層が25%であると仮定すれば、その階層が全体の75%」云々と受け取るのが正しいらしいと、初めて理解しました。したがって、「格差9倍」という数字も、実際の階層状況がわからなければあまり意味がないということになるかもしれません。
上記サイトによると、ジニ係数0.5というのはすでに「格差がきつい」という部類に入っています。日本のジニ係数はここ数年かなり急速に上がっているようで、2000年くらいの数値だと0.33などというのもあり、そのあたりの数値を元に国際比較をしているのもありますが、現在の正確なところを知りたいと思います。
http://www5.cao.go.jp/j-j/wp/wp-je06/06-3-3-10z.html
August 26, 2006
タク庵さん
>世界的に見て日本の貧富の差がどの程度のものか
>(中略)・・・こないだまで「一億総中流」(これ自体が幻
>想だったのだろうと思いますが)と自認してきた社会
>ですから、自己認識の転換はかなり急務ではないか
>と思うのです。認識が共有されなければ、連帯も発生
>し得ないので。
おっしゃるとおりと思います。
私がマル激を見ていて不思議に思うのは、各国の再配分システムの量と質について日本と比較したデータ紹介が無いことです。フランスの市民運動の思想の紹介と同様に重要ではないかと感じます。
国内の格差問題とは視点が変わりますが関連事項として、日本の再配分の金額についてご紹介します。
故石井紘基議員の著書「だれも知らない日本国の裏帳簿―国を滅ぼす利権財政の実態!」では日本のGDP(たしか1999年ごろ)に占める公的支出の割合は約60%(約300兆円)であると紹介されていたと思います。
この数値は公的支出(政府の特別会計、一般会計(重複除外)及び地方自治体支出)の合計金額のGDPに対する割合です。今、現在でも50%強はあるのではないでしょうか。
各国の公的支出のGDPに占める割合はドイツで30%強、イギリスとフランスが20%強、アメリカ約15%と紹介されていたと思います。
各国の農業補助金、特殊法人支出などの統計区分処理の詳細は私には分かりません。ですから計算の仕方によっては一概に日本だけが社会主義的ということはないのかもしれません。(よくわかりません。)
再配分を受けた日本国民は一人当たりいくらの配分となるのか、購買力平価でならした時に世界的にはどれほどの衣食住の豊かさを配分してもらったことになるのかといったことは、マル激で分かりやすく紹介して欲しいと思います。
私が疑問に思うのは、上記の数字のような膨大な再配分が無ければ、日本の農村の自立的相互扶助のシステム、下町商店街的コミュニケーションなるものを1億2千万人の規模で維持できなかったのかどうかということです。
中央政府による膨大な集金システムが、どうしようもない既得権者による巨大なピンはねを温存し、日本国民の衣食住の費用を膨大なものにしている気がしてなりません。
それが無ければ充分に再配分できるんだろうと。
元来、既得権を持ちながらも再配分も受けていた人間が多すぎたのではないか。
小泉政権になっても既得権は基本的には維持されていますから、既得権者は再配分が減っても何とかなりますが、既得権が無く再配分も受けれない人はたまったものではありませんよね。
August 26, 2006
唯一TVで小泉批判をしているのは爆笑問題の太田さんぐらいでしょうか。
あと民放でなければ愛川さんのパックインとか。
もう明らかに左という人は”言わせときゃいい”という感じで相手にされなくなってますね。
逆に左ではない人で邪魔な意見を持つ人が敵とみなされる。舞台と役者が動いたかんじでしょうか。
September 2, 2006
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