お待たせしました。今週のゲストはWinny開発者の金子勇さんです
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マル激トーク・オン・デマンド
第278回[7月25日収録]
Winnyは悪くない
ゲスト:金子勇氏(Winny開発者)
あるツールを発明した開発者が、そのツールが犯罪に使われることを知った上で、そのように使われることを意図していたとの理由から、幇助罪の罪に問われようとしている。これでは、銃が犯罪に使われることを知っていながら高性能の拳銃を開発した人も、殺人幇助に問われることになってしまう。
著作権法違反幇助罪。それがウィニー開発者の金子勇氏が現在問われている罪である。
匿名でファイルを共有できるソフトWinny(ウィニー)がインストールされたパソコンがウイルスに感染し、個人情報や機密情報が流出する事件が後を絶たない。3月には防衛庁や警察のパソコンから秘密扱いの情報が流出したのを受け、安倍官房長官がウィニーの使用自粛を呼び掛けるまでにいたっている。
しかし、ウィニーを開発した金子勇氏は、そもそもウィニーは「広く情報を共有するためのツールに過ぎず、情報漏えいはウィニーを入れたパソコンがウィルスに感染したから起きるのであって、ソフトウェアそのものが悪という考え方は間違っている」と指摘する。
また、検察側の「警察の摘発を免れるために匿名性を高めたソフトを開発し、著作権侵害をまん延させる意図があった」との主張についても、「技術者として、効率のいいファイル共有ソフトというテーマに興味があっただけ。使ってもらうためというより、むしろ議論をわきおこすためにウィニーを作った」と述べ、「思想犯」扱いされることに強く反論する。
しかし、IT技術の進歩に伴い、従来の著作権法の枠組みでは、ネット上で原著作者の権利を守れなくなっているのは確かだ。ウィニーの特徴でもあるサーバーを介さずにパソコン同士がピア・ツー・ピアで情報のやり取りをするようになれば、従来の中央集権的な情報管理も難しくなるだろう。にもかかわらず、インターネット上のコンテンツの保護や管理について新しい社会的な合意が得られる前に、金子氏のような技術開発者が有罪判決を受ければ「ネットワーク関連だけでなく技術者全体への足かせとなる。極論すれば、ネットなんか無ければいいという結論になってしまう」(金子氏)恐れがある。
インターネット上の公共性とは何か。著作権保護の今後はどうあるべきか。P2P(ピア・ツー・ピア)はネットをどう変えるのか。金子氏と共に考えた。
July 30, 2006
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コメント
この手の問題には基本的に不案内ですが、あえて少しコメントしてみたく思います。
著作権法違反幇助罪についてはおかしいというのが番組の論調だったようですが、この記事
http://www.itmedia.co.jp/news/articles/0409/15/news003.html
の中でコメントしている「塩澤助教授」も同様な見方のようで、それはそのとおりなのかもしれません。
ただ、
>検察側の「警察の摘発を免れるために匿名性を高め
>たソフトを開発し、著作権侵害をまん延させる意図が
>あった」との主張
自体は基本的に当たっているのではないでしょうか。
金子氏自身の講演について伝えたこの記事
http://internet.watch.impress.co.jp/cda/event/2006/02/20/10940.html
によれば、金子氏自身の開発の意図は当初から匿名性を当然の前提とするものだったようで、ファイル交換
(番組では金子氏は「ファイル共有」という言い方にこだわっていたようですが、これはたぶん、「ファイル交換」と言ってしまうとソフト制作者の犯罪性がより高くなってしまうからではないでしょうか)
が匿名で行なわれると来れば、そのようなソフトの使用が本来的に著作権の侵害につながるであろうことは自明です。そのようなソフトの制作を(本来真っ当な用途のために作られたものである)出刃包丁--番組で引き合いに出されていた例に即して言えば--を作ることと同等とするのにはちょっと無理があると言わざるをえません。
したがって、警察の告発には、形式的には無理があるとはいえ、根本においてはファイル交換ソフトの問題性を突いているところがあり(警察による告発のそもそもの狙いの問題はともかくとして)、有罪という判決が出ても不思議ではないと私は思います(罪刑法定主義に反するという見方もあるのかもしれませんが)。
余談ですが、金子氏のこの写真
http://internet.watch.impress.co.jp/cda/parts/image_for_link/22006-10940-2-1.html
はビデオニュース・ドットコム上の写真とは印象がだいぶ異なります。不特定多数に自分を見られることを相当気にしているように思えます。
最後に、放送後記で語られていた話の方が、本編よりも遥かに面白かったですが、それに関して言うと、著作権切れの作品はネット上で(たぶん無償で)アクセス可能になり、現代の出版は現代の人間がつくったものを出版することに特化するという方向が、今後ますますはっきりするのではないかと私は思います。それが望ましいとも思います。
その場合、現代においてつくられたものの消費が減少するのではないか、或いはさらに、現代におけるつくることそれ自体も減少するのではないか、ということがあるのかもしれませんが、現代におけるように、何についても過去の膨大な蓄積がある状況では、新しいオリジナルなものはそう簡単につくれるものではないという、当たり前の事実がむしろ再確認されるべきなのではないでしょうか。
放送後記で触れられていた音楽の問題については、そもそも音楽が録音された、つまり蓄音機ができたこと自体に現在の問題の淵源があるように思われてなりません。例えば、歴代の一流音楽家の演奏がこれだけ出回り、しかもそれが良い音質で聞けるのに、なぜわざわざ、必ずしも一流でない生演奏を聞きに行くべきか--ということなのではないでしょうか。作曲の問題は(音階の有限性との関連で)言うまでもないとして。
July 31, 2006
freenetも開発初期からテロ組織が情報伝達に利用していることが問題となっていましたね。Winny問題も極論すれば、freenet開発者をテロ幇助で訴えることができるのかという問題と同等な気がします。freenet開発者はテロリストを支援しているのでしょうか?
vox_populi さんがおっしゃるように、Winnyは確かに著作権侵害行為に寄与する可能性が高いことはソフトウェアの性質上明らかですが、それと、freenetとテロ活動との関係は理屈上は同じで、ただfreenetとテロ活動の方がよりユーザーの需要上、直接的な結びつきが弱いというだけでしょう。テロリストの数自体が少ないですからね。結局程度問題が重要な気がします。原理論としては問題はないけれど、程度問題としては明らかに人類に損害をあたえる可能性が高い原爆を作ってしまった科学者の倫理問題ですよね。
原理論としては金子さんが言っていることが正論ですが、ただ原理論を政治論的に押さえ込むことが今回の警察の目的なので、原理論で対抗していてもあまり未来はないように思えます。原爆問題も同じだと思います。むしろ宮台さんが話していたようにレッシグを初めとするサイバー法の議論をしないと今後の日本の警察の動きには対処できないと思います。
July 31, 2006
無関係話題で恐縮ですが、TBSの731部隊特番の後ろにアベの写真が映ってたってんで、ずいぶん恫喝が入っているようじゃないですか。
http://headlines.yahoo.co.jp/videonews/nnn/20060811/20060811-00000047-nnn-pol.html
私は映像を見ていないので、どういう具合に「映りこんで」いたのかわかりませんが、まさか意図があってやってとは思えない。明らかに言論弾圧であるこうした恫喝に対して、当の局は謝っちゃうだけだし、他の大手メディアも他人の家の火事ということでなんら反論が起こらない。ヨーロッパであれば、こういう恫喝をすると、逆にヒトラーと並べてカリカチュア化されるなどという事態になって、ヤブヘビとなりかねない。
私がこの恫喝がある意味「面白い」と思うのは、「731部隊」と無関係(のはずですよね(^^:)のアベの写真がたまたま映ったことに、なんでそうイラつくのかという点。これが谷垣氏だったら、誰が見ても「731」と結びつかないので、仮に映っていたところで、本人を含め誰も気にしないでしょう。アベの場合は、ご本人の側が、イメージ的に「結びついちゃう」ことを自覚してるということの、これは証なんでしょうか(^○^;
ま、この事件は、アベが首相になると、この国がどんな風に「美しく」なっていくか暗示するようです(ーー;
August 11, 2006
さらに恐縮して続きなんですが、かのNHKの女性戦犯法廷に関するアベチェックのことなど思い合わせると、アベという人あるいはその陣営は、非常に細かく、報道をチェックし、口を出す人たちのようですね。私が報道する側であれば、こんなうるさいやつが首相になったらたまらんと思うだろうと思うのですが、実態としては、各社盛んに「アベ氏優位」の報道合戦をしているようにも見えます。
これはもうすでに、報道する側は、アベに対抗することはあきらめているということなんでしょうか。おそらくはどの新聞に何回アベの良き名前が出ているか、谷垣、麻生の記事との比率までカウントしているであろう恐ろしき陣営に対して、わが社としては少しでもアベチェックのお眼鏡にかない、首相ご栄進の後はわが社の覚えめでたきようにという、経営的配慮なんでしょうか?
しかし、アベ氏はいまだに、正式立候補はしてませんよね。われわれのような下々が投票する国政選挙では、公職選挙法とかの規制とやらで、予断的世論を形成しないために、誰が優位など予測報道は相当に制限されているはずですが、公職中の公職の地位につく人が選ばれる選挙に関しては、立候補表明しないうちから「優位」報道垂れ流しというのは、なんかヘンではありませんか?
August 11, 2006
第278回マル激 Winny問題は本当に著作権のあり方に関する問題なのか?
第278回[2006年7月2日]のマル激は、Winny開発者の金子勇氏をゲストに「Winnyは悪くない」がテーマでした。
ずいぶん時間が経ってしまいましたが、感想を2点。
まず、第一に、金子氏を著作権法違反幇助で罪に問うことが、法的および公益的観点から見て、適当かどうかははなはだ疑問ですが、それはそれとして、金子氏自身の技術者としての結果の責任をどう考えているのか、もっと議論してほしかったと思います。
たとえ社会に大きく貢献する可能性を秘めた技術であったとしても、使い方によっては社会に多大な被害や混乱をもたらす危険性もあるとすれば、やはりその技術の利用や開放には、慎重さが求められるというのは、「科学」に関するコモンセンスなのではないでしょうか。
その点で、Winnyはネットワークリソースの効率活用のための優れた技術であるけれども、違法行為に利用されることは当然に予見されていたわけですから、それに対する防止策なしに、そのまま不特定多数に開放したことについては、有罪・無罪ということとは別に、技術者として責任なしとは言えないと思います。
また、たとえ現行の著作権のあり方に一石を投じることが目的だとしても、だからと言って何の結果の責任も負わなくてよいということにはならないでしょう。
もっとも金子氏もおそらくはそこらへん十二分に意識しているものの、裁判中でだけに、発言に慎重にならざるをえないという事情もあるのでしょう。
第二に、そもそも、マル激では、このWinny問題を、新しい技術の登場にこれまでの著作権のあり方が対応できなくなっているという問題として、とらえているようでしたが、果たしてそ卯なのかという気もします。金子氏の無罪を論じると同時に、Winny問題を著作権のあり方として提起することは、微妙に齟齬をきたすように思われます。
単純化して言えば、もしWinnyを通して著作権のあり方を問題化したかったのであれば、現行の著作権法に抵触するような形で利用されることは、Winnyの開発・開放にあたっての当然の前提になります。違法行為に利用されることは意図していなかったとは言えなくなります。いずれにせよ、これを便宜的に「パラダイム問題」と呼ぶこととします。
逆に、違法行為に利用されることを意図していなかったとすれば、Winny問題は、新しい技術を、現行の著作権のあり方といかに調和させていくかという問題になります。これをとりあえず「制御問題」と呼ぶこととします。
このように、現行の著作権のあり方と新しいWinnyの技術のどちらをどちらにあわせようとするかよって、このWinny問題の性格は大きく変わってくるわけですが、ややこしいのは、もし「パラダイム問題」として立論するならば、金子氏が無罪であるという主張は筋が通らなくなると思われることです。
その点、マル激では、金子氏の責任を論じるにあたっては、どちらかというと「制御問題」としてとらえ、Winnyによる社会的影響を論じるにあたっては「パラダイム問題」としてとらえているように見受けられました(なお、番組終了後のトークのなかでの、宮台さんの指摘は、「パラダイム問題」として、非常に面白かったと思います)。
もちろん、Winny問題を、金子氏の意図と社会的な意義とに、それぞれ切り離してとらえることもアリだと思いますが、果たして番組では、どれほど自覚的だったのかどうか、よくわかりません。金子氏の主張が、なんとなく、どっちつかずのように感じられたのも、こういうことだったのか、という気もします。
まあ、裁判中だからなかなか言いづらいのでしょうが。
August 31, 2006
第299回マル激の総集編で、Winny開発者の金子氏の有罪判決について述べられていました。
正犯と直接連絡をとったわけではないのに著作権法違反の幇助となりうるのかとか、この判決によりソフト制作者を萎縮させるのではないか、といったことで、神保さんはこの判決についてやや批判的でありました。
その点で、例えば小倉秀夫弁護士や法政大学の白田秀彰氏は、この地裁判決について、法的論点を十分に汲みつくしたとは言えないものの、導き出された回答としてそれなりに評価できるものとしています。
小倉秀夫弁護士:
http://www.itmedia.co.jp/news/articles/0612/19/news023.html
白田秀彰氏:
http://www.itmedia.co.jp/news/articles/0612/17/news002.html
もちろん、マル激でも指摘されていたように、コンテンツ業界の意向を反映した検察の動き等もあるのでしょうから、単純に法的可否の議論にとどまるものではないと思いますが、いずれにせよ、技術を提供する側の責任と新技術の社会への貢献をいかに調和させていくかという視点で考えないことには、この裁判から得られることは少ないのではないでしょうか。
January 2, 2007
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