江川達也さんとの歴史認識談義はとても刺激的でした
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今週はやや挑発的な歴史認識論争です。
江川達也さんの歴史認識の話は深く考えさせるものがありました。
日曜の朝更新予定です。
マル激トーク・オン・デマンド
第276回[7月15日収録]
われわれは歴史を正しく語り継いでいるか
ゲスト 江川達也氏(漫画家)
プレビュー
小泉政治とは何だったのかを問う「小泉政治の総決算」。シリーズ第一回目の今回は、靖国参拝問題で問われる歴史認識を取り上げた。
ゲストは漫画家にして日露戦争物語などの歴史漫画を精力的に手がけている江川達也氏。
江川氏は小泉政権の最大の功績は「北朝鮮に拉致の事実を認めさせたこと」と言い切る。その理由は「そのことで戦後日本の言論を支配してきた左(ひだり)が総崩れとなり、より正確で公正や歴史認識が可能になった。その一点をもってして小泉政治の功績を大とする」というものだ。
江川氏は、現在もまだ執筆を続けている『日露戦争物語』の創作のために、アヘン戦争以降の史実を忠実に検証してみたところ、いかに戦後日本の歴史認識が欺瞞に満ちたものだったかがよくわかったと言う。日本人はアメリカや一部の「進歩的言論人」によって、一つのフィクションに過ぎない物語を、それがあたかも客観的史実であるかのように強要されてきたというのだ。そして、現在の靖国参拝をめぐる論争も所詮はそうしたフィクションのぶつかり合いに過ぎないと言って憚らない。
江川氏の主張は概ねこうなる。戦前の日本が本当に目指していたものは、西郷隆盛などの流れを汲む大アジア主義だった。日本がアジア諸国と力を合わせて欧米列強の植民地化に対抗するというものだ。しかし、一部の軍部の暴走と欧米列強の巧みな外交戦術に乗せられた結果対中戦争が泥沼化し、その政策は次第に正統性を失っていった。そして戦争に負けた結果、日本が行ったことは単なる侵略戦争であり、その全てが間違っていたというフィクションを日本は受け入れざるを得なくなった。更にそのフィクションに積極的に乗っかることが得になる言論人が登場し、そのフィクションがあたかも史実となってしまった、と。
しかし、仮にそれがフィクションであったとしても、日本はサンフランシスコ講和条約でその物語を受け入れ、連合国側と「手打ち」をしたことで、戦後の再スタートを切ることが可能になったこともまぎれもない事実だ。今更「あれはフィクションだ。真に受ける必要はない」という主張が、果たして国際的に通用するだろうか。また、今になって日本がそのようなことを言い出せば、国際的な不信を買うことは避けられないのではないだろうか。
そうした疑問に対して、江川氏は歴史を語り継いでいくことの重要性を説く。問題の本質は総理が靖国に参拝することの是非ではなく、日本がやってきたことの過ちは過ちとして認める一方で、その根底にどのような思想があり、どのような思想に基づいて日本が戦前のような政策をとったかについて、正しい認識を持つと同時に、それをいろいろな形で語り継いでいくことが必要なのではないかと問いかけるのだ。
果たして戦後日本でわれわれの多くが信じ込んできた歴史認識は、本当に歪められたものなのだろうか。そもそも歴史認識とはどのように作られるのか。歴史はどのように語り継いでいくべきものなのか。小泉首相の靖国参拝に端を発する歴史認識問題を、江川氏とともにいろいろな角度から考えてみた。
July 16, 2006
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August 12, 2006
コメント
記事とは関係ないことですが・・・
7/15 の日経新聞朝刊5面に米国産牛肉関連の記事があるのをご覧になりましたか?
『十日夜に東京港で陸揚げされた積み荷について、動物検疫所の係官らが中身を表示するラベルの確認作業をしていたところ、牛肉加工品の一箱をみつけた』
見つかったのはローストビーフらしいです。以前の脊柱のときにも思いましたが、見つからずに輸入されてしまっているものもあるんじゃないでしょうか?今回はラベルに品名が表示されていたから水際で発見できたものの、それすら偽装されていればチェックのしようがないんじゃないかと思ってしまいます。
July 16, 2006
番組を見終えてから紹介文を読み直したら、数年前に読んだ構造主義の入門書をふと思い出しました。
あわてて当時取ったメモを引っ張り出してきたところ、何でも、ジャック・ラカンという精神分析の人がこんな感じのことを言ったそうです。
記憶は「過去の真実」ではない。
聞き手とのコミュニケーションの中で「自分をどのような人物ととらえてもらいたいか」、「今後どのように付き合ってもらいたいか」という、むしろ未来向きの視点で思い出されながら形成していった過去が記憶であり、それは彼自身が彼だと思い込むほど彼に似ている像である。
(要約にミスがあったらごめんなさい。気づいた方は訂正願います。)
これに加えてコメントしたいことは特にないんですが、周りを納得させるために意図的に語った記憶の自己像をそのまま自分自身の過去の真実だと思い込んじゃったり、逆にそれはウソだったと言っちゃったりすれば、確かにお前アホかという話になっちゃいますよねぇ。
ともかく今回面白かったので、『日露戦争物語』や他にも紹介されていた本を読んでみようと思いました。
宮沢賢治なんて今まで何一つ読んだことがなかったのですが、たまたま最近岩手県に行く機会があって温泉の待合室に置いてあった彼の詩集をちらっと読んだら、「こんな人だったのか! イメージ(とか他の人から聞いた話)と全然違うじゃないか!」と思っていたところだったので、この際何冊か読んでみることにします。
July 16, 2006
江川達也氏との主張の全部について論評する用意はありませんが、「大東亜共栄圏は正しい」という氏の主張は話にならないですね。大東亜共栄圏であれ戦前の大アジア主義であれ、あくまでも日本人の主導性を前提とした話でしょう。そんなことが中国人や朝鮮人に受け入れられるという可能性の、かけらであれあったかどうか、きわめて疑わしい(少なくとも私は知りません)。また、大アジア主義を肯定的に評価したいのなら、少なくともそれは大東亜共栄圏とは峻別されるべきでしょう。大東亜共栄圏自体はどう見ても後づけの理屈にすぎず、軍部の暴走の正当化以上のものではないと私は思います。
サンフランシスコ講和条約の締結を「手打ち」という宮台氏の言い方も誤りでしょう。講和条約を日本は呑まされたのであり、アメリカと交渉して「手打ち」に持ち込むなどという立場には日本はなかった。そして「呑まされた」のは現実であり、決してフィクションではない。それを「フィクション」と主張してやまない江川氏は、歴史を直視していないと言わざるをえません。
最後に、
>江川氏は小泉政権の最大の功績は「北朝鮮に拉致の事実を認めさせたこと」と言い切る。その理由は「そのことで戦後日本の言論を支配してきた左(ひだり)が総崩れとなり、より正確で公正や歴史認識が可能になった。その一点をもってして小泉政治の功績を大とする」というものだ。
という認識はあほらしすぎます。「左」が総崩れになるのは日朝首脳会談より遥か以前から始まっています。さもなければ、1999年に国歌・国旗法が成立することはなかったでしょう。また、拉致問題は保守系の議員だけが取り組んでいたわけではなく、左派的ジャーナリズムに属する「ザ・スクープ」でも年来論じられていたことを想起する必要があります。ここで江川氏が言う「左」が典型的に当てはまるのは、朝鮮労働党と友党関係にあった社民党でしょうが、社民党が面目を失うことを即「左」の総崩れというのは、現実に全く即していません。
ビデオニュースはもう少しましな歴史談義を提供してくれると思っていたのですが、今回は実にくだらなかった。残念です。
July 16, 2006
今回のまる激は確かに刺激的で面白かったです。こういった特集はまた組んで欲しいと思いました。
それと同時に、日本の中堅私立大学で教育を受けてサラリーマンITエンジニアになり、その間特に歴史に大きな関心を払ってこなかった私には、わが国近現代史の基礎知識が大幅に欠けている、ということを再認識しました。宮台さんや江川さんの断定的な語り口は聞いていて痛快ではあるのですが、それらの議論にどれだけ正当性があるのか判断する知識が自分にないため、聞いていて消化不良感がありました。
単なる宮台節や江川節の消費者になってしまうのではマル激見ていても民放の報道番組見ても変わらないでしょうから、これから関連する書籍を買い集めて勉強してみるつもりです。
蛇足ですが、宮台真司さんが、前々回の番組で霍見教授の語った「下っ端で頭の悪い山形有朋が長生きしちゃったことが明治日本にとっての不幸だった」論をまるで自分の説のような顔して語る姿には若干違和感を覚えました。
July 17, 2006
久々にコメントしますが、江川さんがゲストの時は毎回過激で面白いですね。個人的には江川さんの歴史認識にエキセントリックさや違和感を持つところもありますが、マンガ制作でも「なるべく原典をあたり事実を基に作品に反映させる。」という態度は立派だと思います。江川さんが丸激で毎回主張しているのは“事実と物語(フィクション)を切り分ける”“論理的・戦略的に物事を考え評価する”という事だと思うのですが、知識もない私には江川さんの解釈の正否は分かりません。ただ、思考の進め方やその態度には共感させられました。なので、その歴史解釈に賛同するかどうかは別にして、江川史観による“語られない歴史の映像化”をぜひ実現してもらいたいと思います。
小泉政権の功績として「北朝鮮に拉致の事実を認めさせたこと」は自分も評価したいと思います。確かに「左」が抱えていた一つフィクションを消し去ったインパクトは大きいと思いますが、それで「小泉政権のマイナス面はすべてチャラ」というのはちょっと承服できませんね。私自身が考える小泉政治の最大の問題点は、郵政民営化といった個々の政策よりも「議論の価値を貶めたこと」「議論を議論でなくしてしまったこと」だと思っています。都合が悪くなると、小泉さんはいつも「私はそう思わない」で議論を終わらせてしまう・・・この行為こそ江川さんの主張する論理的な考察の間逆の態度なのでは?
どうやら今後小泉政治の評価についてはシリーズになるようなので、どのような分析がなされるのか楽しみにしています。
あと、今回の内容とは直接関係ありませんが、予定ゲストとして以前から名前が上がっていた小熊英二さんや佐藤優さんも、のんびりと待っていますのでよろしくお願いします。さらに提案なのですが、メールで常時募集している「希望ゲスト&テーマ」については、ブログにも専用エントリーを作って、コメントにて募集するというのはどうでしょう?他の視聴者がどんなゲストやテーマを望んでいるのか興味がありますし。
また、出演予定ゲストがあらかじめ分かっている場合は、事前に聞きたい事を募るというのも面白いかも。まあ、軽い思いつきではありますがリクエストしておきます。
July 17, 2006
第276回マル激 江川達也氏の語りの立ち位置が、日教組のおやじの立ち位置と似ているような気がする件
第276回 [2006年7月14日]のマル激は、江川達也氏(漫画家)をゲストに、シリーズ『小泉政治の総決算』その1として「われわれは歴史を正しく語り継いでいるか」がテーマでした。
今回は、面白かった、というより、もっと面白くできたのに残念、というのが素直な感想です。神保さんも宮台さんも、江川氏を「ネタ」に呼んだのなら、徹底的にその「ネタ」の面白さを引き出せばよかったのでしょう。中途半端に補完してあげるものだから、「ネタ」の新鮮さが生きず、ありきたりの――言ってみれば、近現代史をけっこう勉強したつもりのおやじが安い飲み屋で熱く語る自論程度のものでしかなくなってしまているように感じました。江川氏のようなおやじさんが職場にいる私にとっては、話題の振り方=いじり方が足りないと思います。
ともかくも、今回の江川氏では、宮台さんが日ごろからおっしゃられているただの凡庸な二流言論人にしか見えませんので、もっと「戦後的なフィクションって、国民にとっても無責任に平和主義的オナニーにひたれて気持ちよかったんじゃないの」とか、「江川さん的な啓蒙ってどういう方法でやるの?啓蒙されている大衆にとっても気持ちいいものなの?」とか、そういう振りがあったらよいなと思いました。
ベタ的に見たときの江川氏の主張には、さして目新しいものがあるとは思いません。小泉首相の功績を、社民党的な「サヨク」を一掃したことに求めるのは、他の方が神保さんのブログのコメントに書いているように一面的ですが、それ以前に、『小泉政治の総決算』シリーズ第1回目に対する期待の割にはずいぶんとつまらない評価で、落胆しました。歴史を是々非々で考えないサヨクを批判する側が、サヨクと同じようなことをやるというのは見ていてまあ面白くはありましたが。
また、「日本は悪かった」といった「サヨク」的な戦後言説を批判するのはもっともですが、宮台さんが日ごろ言うように、それに代わって求められる「日本のダメさ加減」に対する「自己分析」の視座が、江川氏が共感する靖国神社の遊就館的歴史観から獲得できるようなものなのかということも、疑問に感じました。せっかくですから、もっと聞いてほしかったと思います。
また、江川氏は、一方にマインドコントロールするための「フィクション(物語)」があって、一方に「事実」があるといった認識のフレームのもと、「事実を「啓蒙」していくべきだ」といった主張を展開しているようでしたが、あの「東京大学物語」を描いた作者にしてはちょっとナイーブすぎます。さすがに江川氏に応じる宮台さんは、「事実」なんてのには拠らずに、「フィクション」には「フィクションを構築するための社会的合意」があって、後者を絶えず確認していく作業が必要だというようなことを言ってフォローしていたようですが。
なお、今回のマル激を見ていると、江川氏と同業の小林よしのり氏のほうが、この点についてははるかに自覚的なのではないかと気づきました。
いずれにせよ、ベタではたいして珍しくもない素材なのですが、料理次第ではもっと面白くなるような気がしました。
July 18, 2006
今回の対談とは別件ですが、佐藤優さんの登場は私も心待ちにしています。確か昨年末には、年明け1月中にはお呼びできる、と神保さんがおっしゃっていた気がするのですが(間違っていたらすみません)。もしかして佐藤さんの気が変わって出演がNGになってしまったのでしょうか?
いずれにせよどこかで告知いただけるとありがたいです。
July 20, 2006
江川氏の番組のとなりに掲載されていた、無料の小沢氏会見(外国特派員協会)を見ました。この会見、日本のマスゴミちゃんの扱いは非常に小さいようですが、いまどき、実にまっとうな見識のある政治家の発言に、ある種の驚きと感動を覚えました。自分は小沢一郎という人を誤解していたのかもしれない、いままで感じていた強権的、独裁者的イメージは、それ自体マスゴミによって作られたものであったかもしれない、とすら思いました。
そういえば、小泉と違って小沢一郎はマスゴミ受けは悪い人であることは確かですね。政局どーたらというレベルの、日本マスゴミの喜びそうなネタを小出しにして、記者を手なずけるタイプでもなさそうで、そのあたりが、マスゴミ連中とあわず、露骨に不快感を表明したりすると、その部分だけがクローズアップされて、強面イメージとなる。。。それが私の中の小沢イメージであったのでしょうか。
私が尊敬しているカレル・ウォルフレンが昔から小沢を買っていて、日本を変えるには早く小沢を首相にすることだとまで言っていました。「日本権力構造の謎」の著者と小沢一郎がどうして結びつくのか、どうにも謎だったのですが、今、少しわかったような気がします。
日本国民にとって、必見ともいえる会見だと思うのですが、マスゴミ各社の扱いを見ると、こいつらほんと、やる気あんの、何を考えて報道しておるのかと思います。いつもながら、全部を速報してくださるビデオニュースに感謝いたします。
July 21, 2006
正直言いますとあんまり刺激的ではなかったかなぁというのが感想です。と、言いますのもここ最近の週刊月刊誌や新聞など含めてその殆どで江川氏の主張されている説ばかりを目にしておりましてかなり食傷気味でありまして、ぶっちゃけていうと「また同じ話かいな」と言うのが正直な感想でした…
刺激的というならタク庵さんも触れられていますが、江川氏の回の横にある民主党の小沢代表の会見の方に軍配が上がりました。いやぁかなり面白かったです。一般メディアがこの詳細を報じなかったのは勿体無かったなぁと思いました。過去からの言動の変化含めて、会見からは、小沢一郎という政治家の辿ってきた道も透けて見えてきて非常に示唆に富んだ面白いものでした。
July 21, 2006
今回の江川さんとの歴史談義はちょっと掘り下げが少なかったように感じました。歴史が権力によって歪曲されて利用されるとか、ネタとベタを区別しろとか、日本人の歴史忘却癖、リアリズムの重要性の話はこれまでのマル激の放送内容の繰り返しだったように感じます。
また、なぜ宮沢賢治か、なぜ石原莞爾かということについて少し説明が欲しかったですね。大東亜共栄圏についても。「歴史の見方、考え方と傾向」という大掴みな話に終始していたように感じました。西郷隆盛の思想についても、宮台さんには出し惜しみせずにもっと詳細に語って欲しいですね。
マル激を視聴していて思うのは、大資本家の政治への関わりについてのコメントが少ないことです。広瀬隆著作「赤い盾」、「アメリカの経済支配者たち」あるいはhttp://www.asahinet.or.jp/~vb7y-td/k6/161019.htmに書かれているような財界ユダヤの話とか、日露戦争で言えば「ハリマン事件」に関する小村寿太郎に対する評価についても言及して欲しかったです。
現代日本で言えば、米国の対テロ戦争なるものの恩恵を日本の産業界が金額にしてどの程度受けているのかについても明らかにして頂ければ分かりやすいです。グローバリズム批判が二項対立に陥らないようにとか、日本の立場も相対化した上で具体案を考えろなどと難しいことを言われるのもよいのですが、まずは日本のGDPに対して米国の戦争がらみの影響がどの程度なのかということ教えていただきたいです。そして米国の戦争でどの日本企業の経営者達が喜んでいるのについても。
またリアリズムが重要というならば、現代の亜細亜主義者は靖国問題以外には何を具体的テーマとして議論すべきなのでしょうか。亜細亜各国の通貨を共同で防衛する仕組みづくり以外にも、日本がドイツのように損をして得を取る覚悟を決めなくてはいけないこととはどういったことなのでしょうか。この点についてもお教えいただきたいです。
追伸: 石原莞爾に影響を与え、「八紘一宇」を造語した田中智学について。
法華経の在家仏教徒で日蓮の再来と言われた田中智学(1861~1939)は明治34年(1901年)に出版した著書「宗門の維新」の中で「日蓮は世界統一の大元帥なり。大日本帝国はその大本営なり。日本国民はその天兵なり。日本国はまさしく宇内(世界)を霊的に統一すべき天職を有す。」としています。 これはつまり「日本書紀」の神武紀における「八紘を一つの宇としよう」という一文を田中氏が拡大解釈したものようです。
彼の著作では『神武天皇が「世界は一つにならねば争いは尽きない。平和を得るためには世界を統一しなければならない。(中略)ここに道義的宇内(世界)統一の本部として日本国の帝祚を照明し、八紘一宇の真理と六合一都の正道を宣示するぞ。」と宣言した。』と断定して書いているそうです。しかしながら彼は神武紀の「八紘を一つの宇としよう」という一文が、中国の「文選」から引用された装飾文であることを知らずに「八紘一宇」を造語したようで、「日本書紀」の考証をした形跡が無いそうです。
田中智学は大正3年(1914年)に国柱会を創設。国柱という名前は日蓮が佐渡に流されたときの遺書である「開目抄」(1297年)の中の「われ日本の柱とならん、眼目とならん、大船とならん。」という三大誓願から取ったものです。彼は自分の説く法華経は天下国家のための宗旨として、世界統一の天業を実現するために、法華経と国体との合一論を説いたそうです。
そして宮沢賢治も法華経の信者で、国柱会ができると上京して入会しています。田中智学の世界統一は法華経という平和的手段による統一であったけれども、一方で軍部への協力を積極的に行っていたので軍人や右翼にも熱烈な信者がいたそうです。その代表が満州事変を指導した石原莞爾でした。石原は熱烈な法華経信者であるとともに、田中智学を日蓮の生まれ変わりとして称賛し、尊敬していたそうです。
「宗門の維新」出版の翌年(1902年)、ハーバード大学の学生であったフランクリン・デラノ・ルーズベルト(当時20歳)は日本人留学生・松方乙彦(当時22歳、松方正義の6男)から日本の「世界制服の百年計画」を聞かされたそうです。1895年の日清戦争、1902年の日英同盟という時勢には日本国民として大いに意気が上がる状況ではあったと思いますが、この松方発言は前年に出版された田中智学の「宗門の維新」から影響を受けたのではないかと私は思うのです。だって、当時のぎりぎり食うか食われるかという欧米列強と対峙していた日本の状況下で、世界制服計画など明治政府がまともに企図していたとはとても思えませんから。
「八紘一宇」を「日本書紀」の本意から完全に外れた「世界統一」という誇大思想として語る人物に、石原莞爾がなぜ共鳴していたのか。石原のリアリズムとはどの程度の内容なのか。どのように「八紘一宇」という言葉を解釈していたのか。オウムのポアとどのように違うのか。この辺に関する江川氏の考察があれば番組はもっと分かり易かったように感じられました。あのままでは、江川氏は大東亜戦争支持者だという心象が視聴者に残ってしまった可能性もあると思います。因みに、井上日召(井上準之助暗殺指導者)、北一輝も田中智学の熱烈な信者だったそうです。
July 29, 2006
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