食品安全委員会のトリックはちょっとひどすぎますよ

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今日の山内一也先生とのマル激、すごく面白かったです。
今週のはでBSE問題を取り上げたのですが、驚くようなカラクリが明らかになりました。
おそらく皆さんも、今回食品安全委員会が20ヶ月以下の牛は検査しなくても大丈夫という答申を出した背景には、日米摩擦に発展し始めているアメリカ産牛肉の輸入再開問題があることには、薄々(というより明確に)気づいていると思いますが、こんなトリックがあったとは。あいた口がふさがりませんでした。

プリオン感染の危険性がありながら、一流の科学者たちがそのような政治的な圧力にいとも簡単に屈してしまうものかが私自身にとっては大きな疑問でした。そこで、食品安全委の中にあって全頭検査を継続すべしとの立場を明確にとっておられる山内先生にぜひ話を聞いてみたいと考え、番組のゲストとしてお越しいただいたわけです。

結論から言うと、そのあまりにデタラメなカラクリにはちょっと驚きました。tというか、少々呆れました。

山内先生を含む12人の専門委員の「大多数」(山内先生談)は、検査から20ヶ月以下の牛を除外することでどの程度BSEへの感染リスクが増大するかを諮問され、増大するリスクそのものは非常に少ないことを答申しました。日本のBSE対策はもともと、BSEの感染源が蓄積されている特定危険部位の除去が言ってみれば「メイン」で、全頭検査はそのセーフティネット的な意味合いを強く持っていました。そのため、もともと検査自体にひっかかるBSE感染牛は僅かしか出てこないことが前提になっていました。つまり、特定危険部位の除去が完璧に実施されていれば、全頭検査を丸々やめてしまっても、リスクの増大はほとんど無いという結論が出ても不思議はないということです。

しかし、その僅かかもしれないケース(日本の場合3年、400万頭以上を屠畜してBSE陽性は16例)を最後の砦として守っているのが全頭検査でした。だから、20ヶ月以下の検査をやめても、リスクの増大が僅かなのは当たり前と言えば当たり前のことだったのです。

山内教授ら専門委員たちは、増大するリスクが「非常に少ない」ことを認める一方で、また全頭検査は続けるべきとの意見も添付しました。特定危険部位の除去が完全に徹底されているかどうかが、まだ十分に確認できていないと考えたからです。

しかし、行政はその意見に対して、「今回はそのような問題は諮問されていない」との理由から、その意見を事実上無視し、「リスクは少ない」という部分のみを専門委員会の答申として報告しました。早い話が、「科学者たちは全頭検査をやめても大丈夫だと言ってたよ」という事実上嘘の報告書があがってきたことになります。

山内教授はメディアの責任も指摘しました。実は役所は答申内容だけを忠実に発表しているが、その発表内容をゆがめて報じているはメディアだと言うのです。おそらくそのあたりは行政と記者クラブメディアの絶妙の阿吽なのでしょうが、なんとも眩暈のするようなひどい話です。

教授ははっきりとこう言っています。「官僚たちに騙された」と。あのワーディングで諮問を行えば、科学者であればリスクの増大は僅かと回答するに違いない。その答申を受けて、メディアに一定のスピンをかけて報告内容を発表すれば、メディアはそのあたりの経緯や意味合いを十分酌んだ上で、しかるべき報道をしてくれるに違いない、といったところでしょうか。確かに新聞記事を読み直してみると、「事実上」という言葉が多用されています。「事実上」というのは、考えようによっては「当人たちにそのつもりはないが、そう受け取ってもらって構いませんよ」とメディアが勝手に言っているに等しいわけで、十分注意して受け止める必要があると思います。

さてさて、どうしたものでしょう。発症した場合の致死率が100%。しかも、脳が侵されて悲惨な死に方をすることになります。ことがことだけに、困ったものだ、では済まないように思うのですが・・・。

番組は日曜(3日)の午前の更新予定です。何事にも怯むことなく、矍鑠として科学者としての持論を展開する山内教授の話を、ぜひご覧ください。

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April 2, 2005



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コメント

投稿者 purelox http://purelox.sakura.ne.jp/sb/

行政の諮問委員会というのは、どこもそういうものになっているようですね。あとは、議員・行政・記者クラブの悪の枢軸というのがあります。御用委員でない方々が選定されるということ自体も大変なんでしょうが、たとえ選定されても、その方々が消耗するだけ‥。こうした根本問題を解決しないと、個別課題も進展しないで多くの問題が同じ道をたどっていきます。さて、どうしたもんでしょうか?

April 4, 2005

投稿者 シアトル在住 

まず政府とは独立した非営利・非政府シンクタンクのような存在が必要だと思います。 やはり政府の諮問機関だと人事、財政、さまざまな面で官僚の介入を許してしまう。 また設問を立て方をコントロールされてしまうと、その後の答申がある方向に誘導される危険性が明確になったと思います。 

April 7, 2005

投稿者 メディア探究 http://doggyman8th.air-nifty.com/media/2005/04/post_9535.html

重要なご指摘だと思います。
新聞を読んでいるだけじゃ気づかないところでした。
さっそくTB&引用させていただきました

April 11, 2005

投稿者 marichan http://blog.goo.ne.jp/infectionkei2/

こんにちは、先日はTBをありがとうございました。
BSEは、食の安全の問題だけではなく、もはや公衆衛生の問題です。現行の院内感染対策で対応できない部分があるほか、現行の感染対策にすでに(というかまだまだ)問題があるため、先を見越した対策をとるべき、と考えています。。

美容外科などで乱用されている人のプラセンタ(胎盤)問題(昨年7月くらいに厚労省に情報は送ったけど、まだ使用者の献血規制がない状態)
http://life7.2ch.net/test/read.cgi/seikei/1090896937/
歯科の感染対策、
http://blog.goo.ne.jp/infectionkei2/e/57316d5ea76dd6092e7c843c2e7d6403
http://www.media-21.com/NDC/html/kansen.html
内視鏡の院内感染事件、
http://www.d1.dion.ne.jp/~jamec/
http://www.kashimura-clinic.com/column01.htm
ようするに、プリオン云々以前に、感染対策に、問題があるということですよね。。。

これからもよろしくお願いいたします。

April 19, 2005

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