Page : 1 / 11  

「検証・民主党政権で日本はどう変わるのか」第6回

霞が関の権益を引き剥がせるか?
政権の試金石「学校理事会」という爆弾
ジャーナリスト 神保哲生

 民主党が政権を獲得した場合、それが実効性のある政権になるかどうかを占う上で、重要な試金石になると思われる政策がある。それは民主党が教育改革の一環として導入を主張している「学校理事会」という制度だ。

 民主党のマニフェストには「公立小中学校は、保護者、地域住民、学校関係者、教育専門家等が参画する『学校理事会』が運営することにより、保護者と学校と地域の信頼関係を深める。」としか書かれていないので、これがそれほど重大な政策のようには思われていなくても不思議はない。しかし、どうしてどうして、この学校理事会こそ、民主党政権のテーマが満載された象徴的な政策と言っても過言ではない。

 なぜならば、民主党の考える学校理事会制度とは、中央官庁の権益を丸ごと引き剥がし(既得権益の剥奪と霞が関の改革)、それを地方に移譲し(地方分権)、地域が独自の判断で学校を運営できるようにする(フェアネス)と同時に、地域の住民を巻き込んで(市民参加)、学校という公的な機関を運営していこうというものだからだ。

 本連載の過去分をお読みいただければわかるように、既得権益の剥奪と霞が関の改革、地方分権、フェアネス、そして市民参加が、いずれも民主党の政策理念の要諦となっている。

 しかし、逆の見方をすれば、もし既得権益を持つ勢力の抵抗に遭って学校理事会の政策を実現できないとなると、民主党政権はおそらく他の分野でも立ち行かなくなっている可能性が高いことになる。いや、そもそもこれを実現できないとなると、民主党の政策理念自体が疑わしいものになってくる。一見地味ながら、それほどこの「学校理事会」は民主党政権にとってメルクマール的な意味を持つ政策と見られるのだ。

続きを読む

August 18, 2009 | コメント (0) | トラックバック (0)

「検証・民主党政権で日本はどう変わるのか」第5回

大手メディアが決して報じない、
「メディア改革」という重要政策の中身
(ジャーナリスト 神保哲生)

・政府の記者会見をすべてのメディアに開放し、既存のマスメディアの記者クラブ権益を剥奪する。
・クロスメディア(新聞社とテレビ局の系列化)のあり方を見直す。
・日本版FCC(米連邦通信委員会のように行政から独立した通信・放送委員会)を設立し、放送免許の付与権限を総務省から切り離す。
・NHKの放送波の削減を検討する・・・等々

 これらの政策はいずれもマニフェストには載っていないが、民主党の正式な政策だ。記者会見の開放はマニフェスト発表の記者会見で鳩山由紀夫代表自身がはっきりと明言しているし、その他はすべて『民主党政策集INDEX2009』に明記されている。

 お読みいただければわかるように、民主党政権では、マスメディア自身が主たる既得権益者として改革の対象となっている。そして、不思議なことにその事実はまだほとんどの人に知られていない。

続きを読む

August 15, 2009 | コメント (0) | トラックバック (0)

「検証・民主党政権で日本はどう変わるのか」第4回

「理念」を掲げれば票が減る?
人気優先マニフェスト選挙のジレンマ
(ジャーナリスト 神保哲生)

マニフェスト選挙が、単なる「ショッピングリスト(買い物リスト)選挙」に成り下がってしまっている。このままでは政権選択選挙というよりも、「子ども手当選挙」だったり、「農業者戸別所得補償選挙」や「高速道路無料選挙」になってしまいそうだ。

 筆者が本連載の第1回目から指摘しているように、民主党の政策にはかなりはっきりとした理念的裏付けがある。それがこれまでの日本の政治との大きな違いだと筆者は思っているし、その理念を掲げた政党が政権の座につくことがあれば、政権交代はさらに大きな意味を持ったものになると考えている。

 その意味で、今回の民主党のマニフェストには、どうしても不満を禁じ得ない。発表されたマニフェストはよく練られてはいるのだが、結局、政策が羅列してあるだけで、これを読めば民主党が日本をどう変えようとしているかが誰にでもわかるような内容にはなっていない。もっとも、そうなることが予測できたからこそ、『民主党が約束する99の政策で日本はどう変わるか?』<という本を刊行し、本連載も書いているのだと言えばそれまでなのだが。

続きを読む

August 15, 2009 | コメント (0) | トラックバック (1)

「検証・民主党政権で日本はどう変わるのか」第3回

再分配の優しさと国民総背番号制の冷たさを併せ持つ
民主党のフェアネス政策
(ジャーナリスト 神保哲生)

 「フェアネス(fairness)」とは、フェアプレー精神の「フェア」の名詞形だ。「公平」を意味する「フェアネス」は、民主党の政策パッケージ全体の理念的支柱である「オープン・アンド・フェアネス」の一翼を担うもので、諸政策に通底する理念となっている。民主党が打ち出している政策の多くには、日本社会を、より「フェア」な社会に変えていこうとする姿勢が色濃く反映されている。
 
 一般的に「フェア」であることは好ましいことと思われているはずだ。実際に公平さという意味でのフェアネスは、民主主義という政治体制においても、自由主義経済という経済体制においても、非常に重要であることは間違いない。
 
 しかし前回述べたように、民主党の主張する「オープン」や「ディスクロージャー」が、単に政府をガラス張りにするだけでなく、市民側にも開示された情報を活用する責任を生じさせるのと同様、フェアネスもまた、市民社会に対して厳しい課題を投げかけるものといえる。
 
 社会全体がフェアであるためには、既得権益を放棄しなければならない場合が多いだろうし、フリーライダー(ただ乗り者)も厳しく追及されることになる。それ自体も一見良いことのように聞こえるかもしれないが、問題は自分自身が既得権益者であったり、フリーライダーであることに対して、われわれ自身が必ずしも自覚的であるとは限らないことだ。
 
 まず、一言でフェアネスと言っても、民主党のフェアネスには以下の3種類が存在する。
 
1)機会均等
2)未来への責任
3)フリーライド(ただ乗り)禁止
 
 このいずれにも、フェアであることの美しさと厳しさが同居している。フェアネスはけっしてきれい事だけでは済まされない。

続きを読む

August 1, 2009 | コメント (0) | トラックバック (0)

「検証・民主党政権で日本はどう変わるのか」第2回

民主党政権の“ディスクロージャー”で問われる市民の覚悟
(ジャーナリスト 神保哲生)

 『検証・民主党政権で日本はどう変わるのか』、第1回目の前回は、民主党政権誕生の意味を、「まかせる政治から引き受ける政治へ」の表現を使って解説したが、実際日本では長らくおまかせの政治がまかり通ってきた。ここで言う「まかせる」は、“官僚にまかせる自民党に市民がまかせっきりの政治”という意味だ。まかり通ってきたというよりも、そもそもこれまで日本では、政治とりわけ国政に一般市民があれこれ口を出すことは、必ずしも好ましいとは考えられてこなかったとさえ思う。
 
 たしかに、戦後復興から高度成長期にかけての期間は、焼け野原から再出発した日本にとって、何よりも経済成長が優先課題であることは、誰の目にも明らかだった。あとはその目的を達成するための最も効率的な方法を、優秀な官僚たちに実践してもらえば十分だった。そこに市民があれこれ口を出す余地はなかったし、国がうまく回り、国民生活が豊かになっている以上、その必要性も感じられなかった。
 
 幸か不幸かその状況は、官僚機構が戦前から共有してきた「由らしむべし、知らしむべからず」の思想とうまくマッチし、まかせられた政府側は市民に対する情報公開にはいたって消極的な姿勢を取るのが常となった。
 
 この「由らしむべし、知らしむべからず」は、論語の「子曰民可使由之不可使知之」(子曰く、民はこれに由らしむべし。これを知らしむべからず)が出典だ。本来は「人々を頼らせることは容易だが、理解してもらうのはむずかしい」という意味であり、為政者に対して民の理解を得ることの難しさを諭し、そのためにはいっそう説明の努力をする必要性があると説く言葉である。それがどういうわけか、「愚かな民は頼らせるべき対象であり、わざわざ知らせる必要はない」を意味するものと曲解されてきたのだから、皮肉としか言いようがない。これは、できる・できないを意味する可(べし)・不可(べからず)を命令形(~せよ・~するな)と勘違いしていることからくる単純な誤解で、受験で古文をしっかり勉強したはずの官僚たちが知らないはずがない。おそらく確信犯的に誤った解釈をしてきたのだろう。
 
 理由は何にせよ、情報公開が決定的に足りないため、これまで市民は政府の意思決定に主体的に関わることができなかった。それが政治への無関心を呼び、さらには市民社会と政治の距離を広げる悪循環となってきた。

続きを読む

August 1, 2009 | コメント (0) | トラックバック (0)

Page :          10 11  

rss 人気ブログランキングへ
神保哲生のTwitterへ
ビデオニュース・ドットコム
マル激!メールマガジン
民主党が約束する99の政策で日本はどう変わるか?