「輸入再開の場合20ヶ月以下にとらわれるべきではない」ペン次官
米国産牛肉に特定危険部位の背骨が混入していた事件を受け、急遽来日したペン米農務次官は24日、都内の米国大使館で記者会見を行い、あらためて米国産牛肉の安全性について日本側の理解が得られ輸入が再開されることになった場合、20ヶ月以下の牛に限定した従来の枠組みにはとらわれるべきではないとの考えを明らかにした。
「2004年10月に合意した枠組みは中間的なものであり、更新されていくべきものだ。いずれにしても、科学的根拠をベースに議論を進めていく。」ペン次官はこのように述べ、日本による米国産牛肉の輸入が再開された場合は、従来の枠組みにこだわらず新たな年齢制限の基準を求めていく考えを示唆した。(報告・神保哲生)
これは実際に私が今日会見で聞いてきた会見です。とりあえず20ヶ月以下が輸入可能になることを目指とするのか、それとも一気に30ヶ月にすることを目指すのかとしつこく聞きましたが、答えは決まってこれ。つまり、OIEで決められている科学的な根拠ある基準を目指すべき、とのことでした。それはイコール30ヶ月ということになります。
先述の通り、もともと20ヶ月という線引きには何の根拠もありませんから。(こちらを参照→食品安全委は何を評価してきたのか)
今はまだあんな事件があった直後なのでアメリカ側も一見神妙にしていますが、もともと20ヶ月以下の基準や、全ての牛からSRMを取り除かなければならない基準は日本が世界の中でも突出して厳しい基準を要求しているという事実もあるので、アメリカ側は結局そこが不満なんですね。だから、時間とともにその不満がだんだん大きくなってくるのではないかと思います。まさか今回の事件がわざとだったとまでは思いませんが。
でも、いきなり背骨が入っているみたいな、わけのわからないドタバタ劇を見せられているうちに、気がついたら「30ヶ月以下はOK+SRM除去も無し」みたいな条件で合意、なんてことにならないといいのですが。
なぜって、それがペン次官がしきりと繰り返す「国際的な趨勢」であることも事実なんです。ヨーロッパもアメリカも所詮は肉食国家ですから。
ちなみにアメリカは国内で流通する牛肉については30ヶ月以上の牛のみがSRMの除去対象になっています。アメリカでは何と、それ以下はSRMつけたまま流通ができちゃうんです。ただし、日本向けに限っては、全ての月齢の牛からSRMを除去することに合意しています。それが今回は引っかかってしまったわけですが、今回の問題の牛もVEALと呼ばれる月齢4ヶ月半の子牛なので、アメリカ国内基準ではもちろんSRMの除去は不要でした。言うまでもありませんが、日本ではSRMは全ての牛から除去されなければなりません。何せ日本ではもっとも若い牛で月齢21ヶ月の牛にプリオン反応が出たわけですから。
もう一点。アメリカ人は日本人が危ないと言っている牛肉を平気で食っているではないか、と言って、日本人の感覚がおかしいんだみたいなことを言う人が日本にもいるようですが、その点については、ぜひアメリカの食品悪評禁止法の存在を知って欲しいと思います。アメリカでは牛肉の危険性をメディアがあまり自由には伝えにくい(伝えられない)構造があることが、日本ではあまり知られていないようですね。
この問題についてはあらためて後日記載しますが、取り急ぎ↓を参考にしてください。
<食品悪評禁止法(Food Disparagement Law)について言及しているサイト>
http://www.cspinet.org/foodspeak/laws/existlaw.htm (英語のみ)
http://plaza.rakuten.co.jp/vinalia/diary/200508170000/
http://ameblo.jp/mkri/entry-10005161051.html
もう一つ重要だと思われる点は、これも私があえて質問した点だったのですが、「これは特殊なケースなのか(isolated case)、それとも氷山の一角なのか(tip of iceburg)」との問いに対し、ペン次官は「isolated caseである」と断定をしました。しかし、その後別の人が「なぜisolatedだと言い切れるのか」を問いただしたところ、まだ今回の件は調査中なのでわからないと答えたことでした。
このやりとりだけを持って、今回の件がtip of iceburgであることを認めたと報じれば勇み足になりますが、少なくともこれが特殊なケースであるとの根拠を示すことができなかったことで、解禁後の1ヶ月で同様のケースがあった可能性が排除できなかったという事実は、本来はニュース原稿に入れるべき重要事項だったと思います。もう食べちゃった人なんかもいるでしょうから。
もちろん私が知る限りでは、どこのニュースにもそれは入っていませんでした。どこの社かは忘れましたが、ひどいところでは、「ペン次官はこれは特殊なケースであると述べた」とだけ報じているところもありました。
やっぱり、平均的な記者のレベルよりも問題への造詣が深い読者や視聴者が出てきている以上、記者会見のノーカットは必要だなと痛感しました。
ビデオニュースは後で使う可能性もあるので、この会見は全部撮っていますが、問題は1時間を超える会見に字幕をつけたり吹き替えたりするのはかなりの作業になり、今はまだそれだけの余裕がとてもないことです。
少なくとも、ビデオニュースでやるときは重要事項は決して落としませんので、当面はそれで納得していただき、そのうちもう少し大きくなったら、会見は全部ノーカットで出します、ということで納得していただきたく思います。
January 24, 2006
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